ドイツで内臓手術をして帰国し、シャルム・エルシェイクで療養していたムバーラク大統領が、遂に口を開いた。彼の答えはNO.NO,NOだった。
ムバーラク大統領がシャルム・エルシェイクで療養している間に、エジプトの各地では、反政府デモが繰り返されていた。その主たるものは、食料品の値上がりに抗議するものであり、その解決手段としての、賃上げ要求であった。
こうした国民の抗議が目立ち始めた裏には、ムハンマド・エルバラダイ氏の大統領選挙参加への、動きがあったからであったろう。ムハンマド・エルバラダイ氏は彼が大統領選挙に参加する条件として、現行憲法の改正と、公正な選挙の実施を挙げていた。
しかし、実際にはいまだにムハンマド・エルバラダイ氏は、政党の登録もしていないのだ。これなしには実質的に、選挙に参加することはできないのだ。したがって、悪い受け止め方をすれば、ムハンマド・エルバラダイ氏は単独で立候補し、当選できるようにエジプト国民の反政府感情を、あおっているともとれよう。
ムバーラク大統領はこうした、ムハンマド・エルバラダイ氏の動きを、危険なものと受け止めたようだ。シャルム・エルシェイクからカイロに戻り、執務に復帰するに際し、彼が語ったことはNOの連続だった。
ムバーラク大統領はムハンマド・エルバラダイ氏の求める、大統領選挙に関する憲法改正に対し、NOと明確に返答した。それだけではなく、政治を変更することもNOであり、緊急法(戒厳令)の解除についても、NOと答えている。そして、混乱を招く選挙の実施についても、NOだと答えた。
ムバーラク大統領はムハンマド・エルバラダイ氏を筆頭とする、反政府派の人たちを批判し、「彼らは貧困者に応えなければならない。いったい彼らに何が出来るというのか?」と非難した。
ムバーラク大統領のこの激しい反政府派に対する批判が、今後どう影響していくのか。国民は沈黙するようになるのか、あるいはその逆に、反政府の動きが拡大していくのか。
今回のエジプト国内の、反政府の動きが活発化した理由は、ムハンマド・エルバラダイ氏の大統領選挙への挑戦の可能性があり、それが引き金となり、その炎に物価の高騰が、油をそそいだという形だった。
加えて、ムバーラク大統領が5月1日のメーデーで、恒例の演説をしなかったことも、彼の健康状態が相当悪化している、という憶測を生み、反政府の動きに拍車をかけたものであろう。その国民の懸念を払しょくする意味もある、久しぶりの演説であったということでもあろう。