A・ネジャドの焦り、ロシアとの関係悪化の懸念も

2010年5月27日

 イランとロシアは、ロシアがソビエト時代、隣接する国同士でもあったことから、極めて関係は複雑だった。隣接国同士は通常、あまり関係がよくないのが普通だ。

 しかし、イランの体制がパーレビ国王による王制から、ホメイニ革命を経て共和国に変わり、両国の関係は改善した。その第一は、それまでアメリカの武器体系のなかに組み込まれていたイランが、ロシア型の武器に代わって行き、ロシアのイランに対する武器輸出が、伸びたことが一因であろう。

 イランは改善したロシアとの関係のなかで、核施設の建設契約をロシアとの間で交わし、ブシェールの原発はほぼ稼働できる状態になりつつある。しかも、ロシアはイランが想定する、イスラエルからのミサイル攻撃に対応することができる、S300型ミサイルの供与も合意している。

 このS300型ミサイルの供与は、いまだに実現していないが、早晩実行されるだろうと思われる。つまり、イランはロシアとの良好な関係のなかで、自国の安全を保持している、ということが言えるだろう。

 もちろん、今回国連を舞台に大問題となっている、イランに対する核開発を阻止するための制裁についても、ロシアはイランを支持してくれるだろう、と思っていたようだ。

 しかし、そのイランのロシアに対する期待は、不確かなものになりつつある。ロシアが拒否権を発動する可能性が、無くなってきたのだ。イランにしてみれば、ロシアと中国が拒否権を発動してくれれば、絶対に制裁案は成立しない、と高をくくっていた部分が、あったのではなかったか。

 このロシアの態度変化に、アハマド・ネジャド大統領は、彼独特の言い回しで噛みついた。曰く、ロシアは大国(イラン)との関係の上で、物事を決定する際には、もっと思慮深くあるべきだ。つまり、ロシアのアメリカ支持の対応を再考し、イラン支持に回って欲しいということだ。

 これに対し、ロシアの外交トップ・アドバイザーであるセルゲイ・プリコドク氏は、ロシアの立場はプロ・アメリカでもプロ・イランでもない、あくまでも国民の利益に沿って、決められるのだ、と切り返している。

 アハマド・ネジャド大統領はこれまで、巧妙な語り口で、アメリカや世界を批判してきた。そして今、盟友と期待していたロシアにも、その鋭い舌鋒を向け始めた。そのことが結果的に、イランを窮地から救うことになるのか、あるいは最悪の結果をもたらすのか。

 イスラエルにもアメリカにも、ある種の焦りがあることをお伝えしてきたが、イランの側にも相当な焦りが、出てきているということであろう。