きな臭い話が尽きないアラブ、今度はレバノンか?

2010年4月29日

 アラブは夏に向かって、必ず何処かで軍事緊張が発生する。それは気候のせいもあるだろう。冗談で暑くなると頭が正常に機能しなくなり、人は我慢が足りなくなって暴発すると、日本人のアラブ通仲間と話し合ったことがある。

 今年も例外ではない、レバノンとシリアに対し、イスラエルが過去に無かったような、緊張状態を抱え込み始めている。大げさに言えば、戦争が何時どの瞬間に起こっても、不思議ではない状態になりつつある。

 そもそも、今回の緊張はシリアがレバノンのヘズブラに対し、ミサイルしかも飛距離の比較的長い、スカッドミサイルを供与したことに始まっている。シリアもレバノンも、それを事実ではないと否定しているが、多分事実であろう。

 緊張の度が高まるにつれ、レバノンのハリーリ首相は周辺アラブ諸国との間で、対応策を講じ始めている。こうなると、どうしても担ぎ出されるのがエジプトだ。ムバーラク大統領は病み上がりを押して、近くイスラエルのネタニヤフシュ首相と会談することになっている。

 サウジアラビアのアブドッラー国王は、シリアのアサド大統領に対し支持の表明をし、ヨルダンのアブドッラー国王はこの夏に、戦争の危険が迫っていると警告している。

 イスラエルには戦争意志が無い、とムバーラク大統領はアラブ側を落ち着かせようとしているが、イスラエルには国内的な事情もあり、戦争の可能性を全面的に否定することは出来ないようだ。

 それは、イスラエル国民のイランの核開発問題に対する不安と不満から、イランに対する軍事攻撃を叫ぶ声が多いからだ。しかし、アメリカが乗り気ではないいま、イスラエルが単独でイランとの戦争を始めることは、大きな冒険であろう。

 しかも、シリア、レバノンパレスチナがイランと連携しており、イランに対する軍事行動を起こせば、イスラエルはイランだけではなく、シリア、レバノン、パレスチナからの攻撃も、覚悟しなければならないのだ。

 イスラエルは結果的に、ガス抜き的なレバノンに対する部分的な軍事攻撃を、実行するかもしれない。つまり、シリアがレバノンのへズブラにスカッドミサイルを供与した。そのスカッドミサイルでヘズブラは、イスラエルの全ての地域を攻撃できるようになった。

 この危険な状態からイスラエル国民を守るためには、イスラエル政府は軍に指示を出し、レバノン国内のスカッドミサイル基地を、破壊しなければならないということだ。そうした雰囲気が広がり、いま当事国の間では日本では想像も付かないような、緊張状態が生まれているようだ。