アカバを攻撃したのは誰かという質問を受けた場合、多くの年配者はローレンス・オブ・アラビアだと答えるだろう。つまり、オスマン帝国の支配下にあったヨルダンのアカバを陥落させたのは、イギリス人情報将校アラビアのロレンスだったからだ。
しかし、今回のアカバ攻撃は、アラビアのロレンスとは何の関係も無い。ヨルダン領内にあるアカバはイスラエル側のエイラート市と隣接している。そのアカバの倉庫にグラドという名のロケットが、今週の木曜日の朝に撃ち込まれたというのだ。
グラドはロシア製のカチューシャ・ミサイルと同様のもののようであり、ロシア製だということが、ヨルダン政府によっていち早く発表されたが、それを発射したのが誰なのかは、いまだに分かっていない。
考えられるのは、占領地のパレスチナ人、イスラエル、エジプト、そしてヨルダン国内からということになるが、ヨルダン政府はヨルダンからは、発射されていないと否定している。
エジプトも現段階では、公式コメントを出していないようだがありえまい。そうなると占領地のパレスチナ人による攻撃、と考えたくなるのだが、どうもそれも怪しい。
BBCは2005年にヨルダン領内から、イスラエルに向けてロケットが発射されたことを取り上げている。この時は結果的に、ロケットはイスラエル領内まで届かず、ヨルダン領内に落下したということだ。
つまり、今回もヨルダン領内から発射されたが、アカバに隣接するエイラート市までは飛ばず、アカバに落下したのかもしれない。それをBBCのニュースは感じさせている。
ただ、このロケット発射は結果的に、パレスチナ人とヨルダン政府との関係を、悪化させる可能性があるのではないか。ヨルダンもパレスチナも、他のアラブの政府や大衆も、皆いまの時点では中東和平交渉がとん挫していることと、自国の経済悪化のなかで、フラストレーションが高まっているからだ。
それらが原因で、第5次中東戦争の引き金にもなりかねない、とヨルダンのアブドッラー国王はシカゴ・トリビューン紙とのインタビューの中で警告している。