イスラエルのヨルダン川西岸に対する水攻め

2010年4月 9日

 イスラエルの基礎インフラ相が、パレスチナのヨルダン川西岸地域に対して、配水を止める可能性を炎めかした。砂漠の世界では井戸を掘っても、なかなか飲める水は出てこないだけに、これは大問題だと思い、注意してニュースを読んでみた。

 それによれば、イスラエルのウジ・ランダウ基礎インフラ相が、ヨルダン川西岸地区に対し、農業工業用水の配水を止める可能性について、語ったということだった。それならばわからないでもない、飲料水を止めるということであれば、人道的に大問題であろう。飲料水を止めてしまうということは、死を意味するからだ。

 それにしても、水攻めをなぜイスラエルのウジ・ランダウ基礎インフラ相は、考えたのであろうか。実はパレスチナ人の農業や工業に携わっている人たちの、排出する下水の量が相当量に上り、近くで掘られた井戸などが、汚染されてしまうからだということだ。

 イスラエルはヨルダン川西岸地区に入植地を建設し、深い井戸を掘り地下水を汲み上げている。しかし、パレスチナ人には深い井戸を掘ることを、許可していない。それでも下水の汚染が、地下水に悪い影響を与える、ということであろう。

 パレスチナ人は資金的な問題もあり、農業工業から出る下水処理を、きちんとやっていないために、出てきたトラブルであろう。この点だけをとれば、イスラエル政府の気持がわからないでもない。しかし、パレスチナ側は「イスラエルは水を止める気だ、人道的に許せない。」と世界に対し、イスラエルのパレスチナに対する水攻めを、声高に訴えるのではないか。

 イスラエルの水の使用については、パレスチナ側は今回の問題ばかりではなく、何度となくクレームをつけている。それは、ヨルダン川西岸地区の入植地に建設された住宅地域には、大量の水が供給されていること、場所によっては、プールも完備されているためだ。

 イスラエル側の強者の論理が、水をめぐってもパレスチナ住民との間に、問題を起こしているということだ。イスラエルは現在、地中海の海水を死海に流す方法や、海水の淡水化プラントの開発など、あらゆる方法で水の確保に、力を入れていることも事実だ。

 イスラエルとシリアとの間が、いまだに戦争状態から抜け切れていないのも、実は水が原因であり、イスラエルが水源としてのゴラン高原を、手放さないからなのだ。

 日本のように、良質な水の豊富な国の住民には、なかなか実感として、理解できない問題であろう。中国も水問題を抱え、昨今では、日本の水源を買いあさっている、という情報もある。この問題は将来の日本にとって、極めて重要であろうと思われるのだが、日本人の関心はいまだに、極めて低そうだ。