サウジアラビアは、スンニー派イスラム教徒が、ほとんどを占める国だ。サウジアラビアのイスラム教は、スンニー派のなかでも厳格な、ワハビー派がほとんどを占めている(?)。
このワハビー派からみると、シーア派は邪道であり、イスラム教として認められないということのようだ。このため、これまで長い間サウジアラビアでは、シーア派教徒が二等国民のような扱いを受けてきている。彼らはシーア派であるだけで、国家公務員になれても、上級職には就けないのだ。
このため、多くのシーア派国民は優秀な者ほど、国外に出ていく傾向があった。だいぶ前の話だが、サウジアラビアからの留学生が、シーア派であることから日本を離れ、アメリカに留学し、アメリカに定着したということを、聞いたことがある。
このところ、サウジアラビアのシーア派に関するニュースは、ほとんど耳にしなかったが、最近になって再度流れ始めている。サウジアラビアのペルシャ湾側に面する、アルホバール市のある個人宅で、シーア派のアシューラの祭りの前の、集団礼拝したことが原因で、その中心となった人物数人が、逮捕されたということだ。
アルホバールでは幾つものシーア派のモスクが、閉鎖されてもいるということだ。つまり、シーア派教徒はモスクを所有することも、建設することも許されていないばかりか、スンニー派のモスクでの礼拝も、認められていないということだ。
サウジアラビアではペルシャ湾に面した、アルカティーフ地域にシーア派教徒が多く居住しているが、アルホバールばかりではなく、それ以外の集落も同じような状況であろう。個人宅での集団礼拝で逮捕されるということは、集会の禁止に関わるという理由であろうか。
最近、サウジアラビアの隣国クウエイトでも、シーア派の書籍がイラクから持ち込まれていることを問題とし、クウエイト人議会議員が厳しく取り締まるよう提言している。
こうした動きが、クウエイトやサウジアラビアで顕著になってきたのは、イランの同地域への影響力が、強まってきているからではないか。アメリカとイランの緊張関係が高まる中で、自国のシーア派国民がイランと通じて、破壊工作を行ったり、反米的な動きをすることを警戒しての、措置なのかもしれない。
シーア派教徒の割合が多いバハレーンでは、彼らによる反政府の行動が、大きな問題となりつつある。クウエイトの場合もカタールの場合も、シーア派国民の割合は低くない。ちなみに、サウジアラビアの場合は、10パーセント程度と言われている。