先月、リビアのシルテ市でアラブ首脳会議が開催されたが、その折に、東エルサレム救済のための、緊急援助が決定された。イスラエルが進める東エルサレム併合の動きを、何とか阻止しようというのがその目的だ。
述べるまでも無く、旧エルサレムの一部にある東エルサレムには、イスラム教徒にとって重要な意味合いを持つ、岩のドーム(サフラモスク)やアクサ・モスクがある。
ここがイスラエルに併合され、岩のドームが壊されアクサ・モスクが壊されて、ソロモンの第Ⅲ神殿が建つようなことになったら、世界中のイスラム教徒が激高することになろう。
したがって、アラブ各国首脳は東エルサレム問題救済のための、寄付を決定したのだ。その寄付金額合計は、5億ドルと相当な金額なのだが、どうも寄付金の集まり具合が悪いようだ。
実は寄付金はいまだに、1ドルもアラブ連盟の金庫に、納められていないということだ。ソマリア、スーダン、コモロ諸島、モーリタニア、イエメン、レバノン、イラクなどは、経済的に極めて厳しい状況にあり、東エルサレムへの寄付どころではない、ということであろう。
しかし、そのほかの国々、なかでも湾岸の産油諸国には、東エルサレム問題救済に対して、十分に寄付をする余裕があるはずだ。
このため、各国がどれだけの金額を寄付するのかを、話し合うための緊急会議を、開催する必要が出てきたということだ。
どうやら、アラブ各国のケチぶりは、今回の東エルサレム救済寄付の場合だけではなさそうだ。以前に開催されたパレスチナ救済会議の時も、3,3億ドルの寄付が決定されたが、実際には1900万ドルしか集まらなかったということだ。その寄付金を納入したのは、エジプト、ヨルダン、サウジアラビアだけであったということだ。
アラブの統一、アラブの連帯はもはや死語になり、イスラム教第3の聖地エルサレム問題に対する関心も、だいぶ薄くなってきているようだ。その一因は、やはりパレスチナ自治政府にあるのではないか。パレスチナ自治政府については、金銭をめぐる汚職、性的スキャンダル事件などが、昨今あまりにも目立つ。
その点、日本政府は律義なのであろう。パレスチナ自治政府の汚職やその他のスキャンダルを耳にしても、全く知らないということにして、寄付金を真面目に、満額送り続けている。お人よしの経済大国がなせる業か。