イラクのシーアは集団のなかで、最も強力なグループがサドル派だ。彼らは巨大なミリシア軍団マハデイ軍を有し、国内国といえるほどの力を誇っている。そのサドル派がイラク選挙後に、首相候補の人気投票を実施した。
この人気投票では、5人の候補が挙げられ、投票者はそのなかから、一人を選び投票するということだ。その5人とは、マリキー氏、ジャアファル・アッサドル氏、アーデル・アブドルマハデイ氏、イブラーヒーム・ジャアファリ氏、イヤード・アッラーウイ氏ということのようだ。
もちろん、結果が出るまでには、数日を要するだろうが、何故サドル派はこんなことを、いまになって実行するのだろうか、という疑問が沸いてくる。しかも、サドル派は明確に、マリキー氏の首相再就任を拒否している。
マリキー氏をサドル派のメンバーが非難するのには、それなりのわけがある。マリキー氏が首相就任期間に行ったことは、サドル派に対する弾圧であり、投獄であったというのだ。しかも、サドル派のメンバーに言わせれば、マリキー首相は何一つ、公約を果たさなかったというのだ。
一部の権力者や権力に繋がる人たちは例外として、イラク国民の大半の貧困状態は、いまだに改善されていないし、失業率の高いのも、相変わらずであり、治安状況が改善されてもいない。
これではサドル派に限らず、イラク国民の多くが、政府に不満を抱いているのは、当然といえよう。その結果、マリキー氏は今回の選挙で、イヤード・アッラーウイ氏率いるイラーキーヤ党に破れ、彼の党である法治国家連合党は、第二位の座に甘んじなければならなかったのであろう。
疑問に戻ろう。ある人はサドル派が今回行った、首相候補の人気投票は、マリキー氏の首相職再就任を、阻止するためのものだというのだ。つまり、投票結果は明らかに、マリキー氏に対する「ノー」となり、マリキー氏が種々の画策をしたとしても、どうにもならない状態を、今回の人気投票の結果で、イラク国内に示そうということのようだ。
それならば、イラク選挙が終わったいま、何故人気投票をするのかが納得できる。マリキー氏は選挙結果に不満を述べ、法律専門家をして、イヤード・アッラーウイ氏の出自をさらけ出し、彼には首相になる資格は無いと言わせている。しかし、いまとなってみれば、その努力は逆効果にしか、ならないのかも知れない。