イラク首相選出に向けた動き・アッラーウイ優位か

2010年4月 2日

 イラク選挙が終わり、各党派がどれだけ当選者を出したのかが、明らかになった。結果は、アッラーウイ氏のイラーキーヤが91人、マリキー氏の法治国家連合が89人、というものだった。

 もちろん、アッラーウイ派もマリキー派も、単独では過半数を占めることができなかったので、他党との間で連立を組まなければならない。そこでイラクの各政党と、アッラーウイ氏やマリキー氏の関係が、どうなのかということが、今後の問題となってくる。

 以前にも指摘したように、そこで注目を集めるのが、サドル派でありハキーム派だ。もちろん、クルドもその重要なグループの一つであり、これらの派閥とどう協力関係を組めるかが、首相職に誰が就くのかを決める、決定要因となろう。

 現在伝わってくる情報によれば、クルドのタラバーニ氏(現在大統領)とアッラーウイ氏との関係は旧知の仲であり、信頼が厚いということだ。単純に考えれば、アッラーウイ氏はクルドの支持を、マリキー氏よりも受けやすいということであろう。

 ハキーム派はアッラーウイ氏が、旧バアス党員で当選した者に対し、どう対応するのかに、ポイントを置いており、場合によっては、支持できないというニュアンスの立場を示したが、基本的にはアッラーウイ氏を、支持しているようだ。

 もうひとつのキングメーカーであるサドル派は、マリキー氏が再選されることに反対しており、現在首相候補の位置にあるとする5人を挙げ、個別対応で、人選をして行こうということのようだ。

 そのサドル派が挙げている5人とは、マリキー氏、ジャアファル・アッサドル氏、アーデル・アブドルマハデイ氏、イブラーヒーム・ジャアファリ氏、アッラーウイ氏ということのようだ。

 つまり、サドル派としてはこれら5人の名を挙げ、いずれの人物でも選択する意思があることを示し、より自派にとって有利な条件を、首相候補者から引き出そう、と考えているということであろう。

 しかし、大勢はアッラーウイ氏に有利ということではないか。それは彼の剛腕によって、首相就任当時に一定の治安回復を、成し遂げているということ、アメリカとの関係があること、多数派であるシーア派の出身であること、そのうえ世俗主義者であることなどによろう。

 国連は選挙結果を尊重するよう、イラク国民に呼び掛けているが、それはアッラーウイ氏の勝利を認めろ、ということであろう。アラブ諸国も基本的には、宗教色シーア派色の弱い世俗主義者であるアッラーウイ氏の、首相就任を望んでいるようだ。