キルクークを経済首都にする案

2010年4月 1日

 イラクの北部に位置するキルクークは、世界有数の石油埋蔵量を誇っている地域だが、その主権が誰にあるのかをめぐって、クルド人、トルコマン人、アラブ人の間で、いまだに不安定な状態にある。

 クルド人たちはキルクークを、彼らの土地だと主張し、トルコマン人やアラブ人は元々そこに住んでいたと主張し、対立してきていたのだ。莫大な石油収入を見込める土地であるだけに、なかなか解決の目途が立っていない。

 そうした中でアラブの各党から、キルクークを経済首都にしよう、という新たな提案が出された。つまり、キルクークを誰の帰属にするのか、という形ではなく、経済の中心地にすることによって、誰もが利益を得られる形にして、問題の解決を図ろうというものだ。

 もし、こうした形で合意が見られれば、キルクークは安定を取り戻し、同時に、イラク北部のクルド地区全体が、安定化に向かおう。

 しかし、この夢のような提案には、実現に際して幾つもの障壁がある。第一にクルド人がこれまで、キルクークを彼らの土地だと主張してきた立場を、簡単に変えるのか、という問題がある。

 キルクークを始め、イラク北部のクルド人の多い地域では、サダム時代にクルド人が他の場所に移住させられ、アラブ人を多く居住させた、といういきさつがある。しかし、2003年のイラク戦争以来、アメリカ軍の保護の下に、クルド人が逆にキルクークなどで、トルコマン人やアラブ人を追い出す、という傾向が見られた。

 そうした双方のこれまでの動きから、元々のキルクークの居住者が誰なのか、極めて不鮮明になっている。そこでクルド人が主張してきたのは、居住者による住民投票を実施して、結論を出すべきだという案だった。

 もちろん、それは現在の居住者の多数を、クルド人が占めているという、クルド人優位の状況に立っての判断なのだ。そうなるとキルクークの帰属に関する法律条項140を、どうするかという問題が浮上してくる。

 夢のような提案ではあるが、この提案が現実のものとなるには、幾つかの障壁を越えなければならない、ということのようだ。しかし、現実的な問題の解決策が考えられ、アラブ人トルコマン人クルド人が、お互いに考えるようになったということは、新たな前向きな状況、ということではないのか。