イラクの選挙の裏で旧サダム派が動く

2010年3月31日

 イラクの選挙が終わり、大筋が明らかになってきた。アッラーウイ氏が勝利し、マリキー氏が現役の首相であったにもかかわらず敗北した。マリキー氏の政党は、2人の当選者数の差で、アッラーウイ氏の政党に敗北した。

 しかし、だからと言って今後、アッラーウイ氏の政党がすんなり、他党との連立に成功し、組閣が出来るのか否かは、不明な部分が残る。マリキー氏にはまだまだ、勝利の可能性が、残されているということだ。

 今回の選挙では世俗派と宗教派という形に、結果的には色分けされている。つまり、アッラーウイ氏率いる政党は世俗派であり、マリキー氏の世俗派をうたってはいたが、マリキー氏の政党は現実には、宗教色をぬぐい切れず、しかも、シーア主要各派との連携に失敗した。

 したがって、マリキー氏が今後勝利しようと考えれば、当然この宗教組織との関係を修復する必要があろう。サドル師、ハキーム師らの率いる、シーア派のグループがそれだ。

 世俗色を強く打ち出したアッラーウイ氏は、イラク国内で今後、どう自派の力を強めていくのであろうか。また、旧バアス党との関係を、どう考えているのであろうか、ということが気にかかる。

 選挙期間中には、旧バアス党関係者の候補が、多数立候補を認められなかったということがあったが、今後は彼らにも、選挙に参加する自由を認めていかなければなるまい。そのことにアッラーウイ氏は、反対しないのではないかと思われる。

 リビアのシルテでアラブ首脳会議が開催されたが、そこには意外なことに旧バアス党幹部が招かれていた。もちろん、オブザーバーであって、正式な参加者ではなかったろう。

 このバアス党の現在トップに位置している、サダム体制時のナンバー2であるイッザト・ドーリー氏は、アラブ諸国がイラクのミリシアを、支援すべきだと主張している。

 そのことは、今回のアラブ首脳会議に、旧バアスの代表が招待されたことと併せて考えると、アラブの一部の国々は旧バアス党に対し、何らかの支援援助を行っているということではないか。なかでも、今回の会議に旧バアス党員を招待したリビアは、バアス党支援をしているか、今後する意思がある、ということではないか。

 その旧バアス党が今後、例えばアッラーウイ政権が出来上がった段階で、どう影響を及ぼしていくのか、アッラーウイ氏はどう旧バアス党員に、対応していくのか、興味深いところではないか。