アッラーウイの選挙勝利はイラクのイラン離れか?

2010年3月27日

 イラク選挙の結果がほぼ出た。それによればアッラーウイ氏派イラーキーヤが91議席、マリキー氏派法治国家連合が89議席を獲得したようだ。(アッラーウイ氏派が92議席、マリキー氏派が91議席という報道もある)

 この結果を見て、イスラエルのエルサレムポスト紙は、イラクのイラン離れと報じている。実際はどうなのだろうか。

 いまの段階では、アッラーウイ氏の派閥がマリキー氏の派閥よりも、多数を獲得したことは事実だが、だからといって、アッラーウイ氏が首相に就任する、とは断定できない。

 マリキー氏派は票の再計算を、要求していることがその理由の一つだ。加えて、首相が選ばれるまでには、まだまだ幾つものプロセスがある。議会議長が選出され、次いで大統領、副大統領が選出され、首相が選ばれるという過程が待ち受けている。

 その段階で、アッラーウイ氏の派閥もマリキー氏の派閥も、過半数を取っているわけではないから、当然、連立を他党と組まなければならない。そうなると、意外な組み合わせが、生まれる可能性があるのだ。

 そこで大きな影響を及ぼすであろうと思われるのは、前に書いた通り、シーア派の重鎮である、サドル師やハキーム師だ。イラク国民の60パーセントを占める、シーア派を代表する二人が、どう動くかによって状況は一変しよう。

 あえて、アッラーウイ氏の首相就任の可能性について述べれば、イラク国民はアッラーウイ氏という、豪腕な政治家を選択したということであろうか。彼は首相就任時、強力な治安対策を実施し、テロリストや反対派を押さえつけ、一定の安定を生み出していたからだ。

 もう一つの要素は、アメリカがどのような人物が、イラクの首相に就任することを希望するか、という問題があろう。マリキー氏はアメリカにとって、好都合な政治家であり続けたが、後期に入り次第に、イラクの国益を前面に出してきた、という経緯がある。それでもマリキー氏はアメリカにとって、好都合な人物であったのではないかと思われる。

 しかし、マリキー氏はイラン対応をめぐっては、イラク国内に建設されたアメリカ軍基地を、イラン攻撃には使用させないことを明言していた。つまり、マリキー氏はアメリカがイラク国内に建設した、幾つもの巨大な空軍基地を、イラン攻撃やイランへの軍事的圧力をかける上で、何の価値も有さない状態にしてしまったのだ。

 アッラーウイ氏が首相に就任した場合、彼はイラク国内のアメリカ軍の軍事基地を、イランに対する恫喝や攻撃に使用させるのだろうか。そうであるとすれば、アッラーウイ氏が首相に就任する可能性はあろう。またそうであるとすれば、アメリカが何らかの選挙結果と集票への関与をした、可能性があるかもしれない。

 最近になって、ジェゴガルシア島にあるアメリカ軍基地には、武器弾薬が相当量陸揚げされている、という情報があるし、サウジアラビアがイスラエルのイラン攻撃に際して、自国の領空通過を認めたという情報も流れている。

 イラクの今回の選挙は、イランに対するアメリカの対応がらみの、可能性があるのかもしれないとかんぐりたくなるが、それはかんぐりすぎだろうか。そうであって欲しいものだ。