エジプトの次期の大統領選挙をめぐり、IAEAの事務局長だったムハンマド・エルバラダイ氏が、挑戦するのではないか、という憶測から、与党も対策を考え始めているようだ。
エジプトで発行されている「マスリ・アルヨウム=エジプト・トデイ」誌は、与党による野党各党に対する説得工作が、始まったことを伝えている。それによれば、正式に政党として認められている、代表的な野党3党であるワフド党、タガンムウ党、ナセル党に対し、与党は議席の追加配分を、持ちかけているということだ。
ワフド党には23議席を、タガンムウ党には20議席、ナセル党には20議席を配分するという提案が、なされたということだ。これら3党以外の、弱小政党に対しては、5議席が配分される見通しのようだ。
ムスリム同胞団は野党最大勢力なのだが、法律で政治活動は禁止ということになっているために、今回の場合は対象外になってしまう、ということであろう。そこで、エルバラダイ氏がムスリム同胞団と組んで、選挙に打って出るかというと、それは可能性が低いのではないか。
野党各党は今回の選挙をめぐって、政府から種々の要求を引きだせる、チャンスとみたのであろうか。政党助成金を引き上げるように、という要請が出されているし、議員の活動助成金も、増額の要求が出始めている。
そうだとすれば、エルバラダイ氏が野党連合を結成して、その結成された組織から代表として、大統領の選挙に挑むことは、ほとんど不可能に近いということではないか
エジプト政府はムバーラク大統領、あるいは彼の子息ガマール氏の擁立に、有力な対抗馬が立つことの無いよう、1年以上前の今の段階から、周到に手を打ち始めているということであろう。
ムハンマド・エルバラダイ氏には、たとえ立候補できたとしても、ムバーラク大統領や彼の子息だけではなく、有力な対抗馬がいることも事実だ。以前に大統領選挙立候補を噂された後、エジプト外相の立場から、アラブ連盟の事務総長に就任した、アムル・ムーサ氏がいる。
それ以外にも、もしエジプトが選挙をめぐって、混乱をきたすようなことになれば、エジプト軍は黙ってはいまい。軍が最大の勢力であることはナセルの革命当時から今日に至っても、何の変化も無いということだ。タンターウイ国防大臣は現段階では、なりを潜めているが、エジプト政局が混とんとした場合には、何らかの動きに出ることもあろう。