アハマド・ネジャド大統領のイスラエル非難

2010年3月12日

 イランのアハマド・ネジャド大統領がイスラエルに対して、敵対的発言を繰り返してきたことは、誰もが知るところだ。

 その上に輪をかけたような発言が、彼の口から最近飛び出している。アハマド・ネジャド大統領は、イスラエルにはどのようなことをしても、将来がないのだ、と断言している。

彼はイスラエルについて「世界で最も嫌われる体制」と語り、「欧米諸国にとって最早、イスラエルは有益ではない存在になっている。」とも語っている。したがって、欧米諸国はいま、イスラエルへの支援を継続することが、得策か否かを、考慮し始めているとも語った。

そのようなイスラエルという体制は、新たな地域戦争を起こしても、その国家的生命を、長らえることはできない、とも語っている。例えば、イスラエルがレバノンやシリアに対する、新たな戦争を起こしたとしても、ほんの少しだけ寿命を延ばすにとどまるだろう、という見通しだ。

ここで考えなければならないのは、アマハド、・ネジャド大統領が何故ここまで、イスラエルを目の敵にするのだろうかという点だ。イランにとって一番の懸念は、アメリカによる軍事攻撃ではなく、イスラエルによる軍事攻撃の、可能性であろう。

そもそも、イランの核施設が平和利用ではなく、核兵器の開発を最終目的にしている。したがって、これを早期に阻止しなければならない、と叫び続けてきたのはイスラエルだった。そのイスラエルに対して、イラン側、アハマド・ネジャド大統領が、強い敵意を抱いたとしても、何の不思議もあるまい。

アハマド・ネジャド大統領がここまで、イスラエルをあからさまに非難するのは、それだけイランがイスラエルによる軍事攻撃を、現実の脅威として受け止めている、ということではないか。

他方、イスラエルもまたイランと同様に、イランの核開発は核兵器の製造に、繋がるものだと信じ込み、その核兵器が最初にイスラエルに向けて、放たれると信じているのであろう。

このイスラエルとイランとの、双方向の不信感と敵意は、ヨーロッパ諸国もアメリカも、あおることこそあっても、沈静化に努力する姿勢は見えない。そのことは、ヨーロッパ諸国やアメリカには、イランとイスラエルとの緊張が高まることによって、何らかのメリットがあるという憶測も成り立とう。

このイランとイスラエルとの緊張緩和に、手を差し伸べられる国のひとつは日本であろうが、IAEAの事務局長に就任した天野氏は、イランばかりではなく、第三世界の諸国からも、アメリカ・イスラエルに寄り過ぎている、という厳しい批判の声が上がっている。

 残る仲介役を務め得る国は、トルコだけということになるのではないか。そのトルコがどこまで、この重大問題の仲介役を、果たしうるのか注目したい。