イラク選挙後の状況・当分は安定か

2010年3月11日

 イラクの選挙が3月7日に実施された。この選挙には有権者のおよそ62パーセントが参加し、その投票総数は2000万票とされている。

 前回、2005年の選挙では76パーセント程度の投票数だったが、今回はアメリカが関与せず、イラク人自身の手で実施されたということから、賞賛に値するものだ、というのが内外の評価だ。

 さて問題はこの選挙の最終結果が、いつ発表されるのか。そして、その投票結果が、今後のイラク国内にどのような状況を、生み出すのかということだ。当初、予定されていた中間発表は、水曜日(3月10日)であったが、一日遅れて木曜日(3月11日)になる模様だ。

 しかし、それは中間発表であり、最終的なものではない。選挙の最終結果は、3月末に発表されるという見通しだが、この結果発表の遅延をめぐり、種々の憶測が、飛び始めている。

すでに、INA(イラク国民同盟)はアメリカが投票数に、集計段階で関与し、得票数を操作する、という疑念を発表している。INAに言わせれば、30パーセント開票段階での、中間発表が遅れたのは、アメリカが得票数を操作する、意図があるからだというのだ。

 アメリカに対する不信感は、INAばかりではなく、他の政党にもあろう。しかし、イラク国内諸政党間の問題は、当分は棚上げされるのではないか、と思われる。マリキー首相は拒否権を発動しないのであれば、内閣に参加できるとしているし、今回の選挙では前回とは異なり、スンニー派も積極的に、投票に参加している。スンニー派議員の内閣入りも、十分ありうる状況になってきている。

 シーア派の政党も、内閣入りを口にし始め、拒否権は発動しない方向であることを、明らかにしている。問題は、選挙後の治安がどうなるのか、ということだが、イラク内相は治安維持に問題はないよう、最大の努力をする、と語っている。

 こうなると、当分の間、イラク国内各政党各派は連帯し、新たな国造りに向かうということになるが、そうなると、アメリカ軍には一日でも早く出て行って欲しい、というイラク人の国民感情が、前面に出てこよう。

 アメリカはこのイラク国民の感情を受け止め、素直にイラクから撤退していくのだろうか。もしそうでない場合には、これまでとか異なる、イラク対アメリカの戦いが始まる、危険性があるということだ。