元IAEAの事務局長だったエルバラダイ氏は「エジプトの政治を変えるためには、憲法を改正し、自由に立候補ができるようにすべきだ、エジプトが変わるためには、エジプト国民皆が立ち上がらなければならない。」と語った。
次期大統領選挙に、出馬意向をちらつかせたエルバラダイ氏は、エジプト政治の変革に、一石を投じることができたのであろうか。エルバラダイ氏はエジプトに帰国し、多くの政治団体幹部や知識人と意見を交わし、自身の方針を明らかにしたようだ。
エルバラダイ氏の呼びかけに応じて、エジプトの主要野党である、ワフド党、タガンマア党、ナセル党、民主戦線党などが、合同会議を土曜日に開催し、憲法改正を実現する方法について、討議することを予定している。
エルバラダイ氏はインターネットやフェイスブックを活用し、できるだけ多くの国民層に、働きかけるべきだとも呼びかけ、特に青年層の活躍を期待した。もちろん、インテリ層に対しても、同様に期待している。
このエルバラダイ氏の呼びかけに応え、一部ジャーナリストの間からも「大統領職を、子息に継がせてはならない。」と主張する動きが再燃してもいる。一部、エルバラダイ氏を推す知識層の間には、エルバラダイ氏が元政府機構の一員であったことや、彼がラジカルではないことを、好感する者もいる。
しかし、ムバーラク大統領の側も、このエルバラダイ氏を中心とする新しい動きを、ただ眺めているわけではあるまい。彼は高齢を推して、最近エジプト各地を訪問しているが、それは次期選挙に向けた、キャンペーンであったともとれよう。
エジプト最大の発行部数と長い歴史を誇るアルアハラーム新聞の編集長であるアブドルモナイム・サイド氏は「現体制が30年にも渡る長い間、この国を統治してきており、十分にスマートでずる賢くもある。エルバラダイ氏はナイーヴ過ぎる、蜃気楼を見ているだけではないのか。」と皮肉っている。
また、アルマスリ・アルヨウム紙の編集長であるマグデイ・アルガッラード氏は「いかにして野党各派と話し合うかだ。彼らと個別に話し合って、どう野党の勢力をまとめるかが重要だ。」と語っている
いまの段階では、エルバラダイ氏の投げた一石が、エジプトの政治に大きな水の輪を作っていくのか、あるいは、大騒ぎしただけに終わるのか、判断のしようがない。
しかし、彼の動きにはもう一つ、自身の努力が欠けているように思えるのだが。エルバラダイ氏は「私を支援することは、貴方方自身を支援することになる。それがエジプトの政治を変えるのだ。」と語っているが、それだけではなく、彼自身の一層の努力が必要なのではないか。
エジプトに出入りするのではなく、エジプト国内に腰を据えて、政治と国家の変革に着手すべきではないのか。これまで多くの政治家たちが、その結果として逮捕されたり、弾圧を受けたりしてきていることを考えると、エルバラダイ氏が何の犠牲も払うことなく、大統領に当選するのは、夢物語のような気がするのだが。