ついにといっては何だ、がまさについにと言うにふさわしい発言が、イランの反体制側から出てきた。昨年の大統領に立候補して敗れた、ミル・フセイン・ムサヴィ氏が体制側に対して、最近、最も手厳しく最も過激な発言をした。
ミル・フセイン・ムサヴィ氏は、イランの現体制を「カルト集団」だ、と非難したのだ。つまり、現在イランを統治している、ベラヤト・ファギ集団(イスラム法によって統治する集団)はカルトであって、正しいイスラム教に沿って国を統治しているのではない、と言い放ったのだ。
ミル・フセイン・ムサヴィ氏は「このカルト集団によって、イランの民族主義やイラン主義は押さえ込まれたため、イラン国民は宗教の名によって行われる、カルト統治に寛容性を失ったのだ。」と語っている。この発言は「カラメ」という名のウエッブ・サイトとの、インタビューの中で語られたものだ。
ミル・フセイン・ムサヴィ氏と対抗する側の、ハメネイ師は「昨年の6月12日に行われた、大統領選挙の結果を受け入れない者は、政治に参加する資格がない。」と切り捨てている。つまり、反体制派のリーダーであるミル・フセイン・ムサヴィ氏やカロウビ師は、イランの政治について、語る資格の無い者たちだ、ということだ。
そうである以上は、この反体制側の二人が主導する、体制に対する批判の運動は、全て非合法ということになり、これまで以上の弾圧が、反体制派の人たちには、行われるということであろう。
イランの体制側は、昨年激しかった反体制派のデモを、首尾よく押さえ込むことに成功し、今年の革命記念日では、一部の小規模な例外を除いて、ほぼ完全に押さえ込めた、という自信があるのであろう。
しかも、最近ではイスラエルやアメリカとの間で、戦争の可能性が高まっており、イラン国内は緊張に包まれている。そうした折に、反体制運動も民主化運動も、国民の多数派によって、否定されると考えているのであろう。
そうだとすれば、アメリカやイスラエルが、激しくイランの体制を非難することや、戦争の可能性をちらつかせることは、かえってイランの体制を、堅固なものにするのかも知れない。
アメリカの力による他国への介入と干渉は、どうもこのところ、反発を強めるだけで、効果を生み出していないのではないか。アフガニスタンでもイラクでも、同様の反応が見られるのだが、そのことを、アメリカは全く意に介していないようだ。
アメリカは力による押さえ込みを、続ければ続けるほど、世界中でアメリカに対する反発を強め、アメリカ自身は経済的にも精神的にも、軍事的にも疲弊していくのではないか。そうであるとすれば、一度立ち止まって、世界への対応を、再考すべきではないのか。今となっては、アメリカの力による支配に、何の抵抗も示さずに、屈服するのは世界では、日本人だけなのかもしれない。