A・ムーサ・アラブ連盟事務総長の発言の重要性

2010年3月28日

 イスラエルのエルサレムポスト紙は、「われわれは和平プロセスの失敗に備えなければならない」というタイトルの記事を掲載した。その記事は、アラブ連盟事務総長のアムル・ムーサ氏が、極め意味慎重な発言をしたことを報じている。受け取り様によっては、アラブ諸国に対し、イスラエルとの戦争を覚悟しろ、という内容になるものだと私は受け止めた。

 リビアの中間に位置する、地中海に面した街シルテで、アラブ首脳会議が開催されたが、その席上でアムル・ムーサ事務総長は、イスラエルの東エルサレムにおける、入植地建設という侵略行為を、激しく非難したのだ。

 彼は「われわれは和平プロセスが、完全に失敗した場合に、備えなければならない、イスラエルに対し、立ち上がる時が来た。われわれは別の選択を、見つけなければならない。なぜならば状況はターニング・ポイントに到達しているからだ。」といった内容の発言をしたのだ。

 これを受けて、トルコのエルドアン首相も「イスラエルによるエルサレムの平和と、ムスリムの聖域に対する侵犯は、受け入れられないものだ。」とイスラエルを非難し、「イスラエルの東西エルサレムを、自国の首都としようとする行為を、狂気に満ちたものであり、東エルサレムにおける建設行為は、全く正当性を持たないものだ。」とも非難している。

 アムル・ムーサ事務総長はイランの核について、話し合う必要があるとし、同時にイスラエルの核も、討議の対象だと主張し続けてきている。アラブ各国首脳も一様に、中東地域を非核地域にすべきだと主張している。

 このアムル・ムーサ事務総長の発言内容を、日本はどの程度重要に、受け止めるだろうか。そして、それと共に、トルコのエルドアン首相が同じような、厳しいイスラエル批判をしたことを、どう日本人は受け止めるだろうか。

 少なくとも、このアムル・ムーサ事務総長の発言を取り上げたイスラエルは、その内容が「イスラエルとの戦争」という、最悪の選択をアラブ各国首脳に、迫ったものだ、と受け止めたのではないか。

 いま、アラブ各国ばかりではなく、イスラム諸国全体が、イスラエルによるエルサレムの聖域に、シナゴーグを建設することは、アルアクサ・モスクの破壊に繋がることである。そしてそれは、ユダヤの第三神殿の建設に繋がるものだという受け止め方をし、イスラエルに対する激しい反対行動を、展開し始めていることを、見逃すわけには行くまい。

 そうした時期であるだけに、今回のアムル・ムーサ事務総長の発言は、極めて重要かつ危険性を含んでいる、と受け止めるのが妥当であろう。

イスラエルはアメリカの和平仲介に対しても、バイデン副大統領のイスラエル訪問時に、東エルサレムでの入植地住宅建設を、あてつけのように発表し、アメリカとの関係を極めて悪いものにしている。つまり、イスラエルはいま明確に、しかも意図的にアラブに対し、挑戦状を突きつけているということだ。 

そして、そのイスラエルの立場は、アメリカをしても阻止できない、ということを世界全体に対して、明確に示したということであろう。それにアムル・ムーサ事務総長が、明確に応えたということではないのか。