イラクでは3月7日に、国会議員選挙が行われる予定だ。これまで、この選挙にスンニー派が参加するか否かが、大きな話題になっていたが、最終的には参加することに決まった。
当然といえば当然であろう。イラクンの現在の国内状況から判断すると、国会議員になるということは、各種の権益を得るということに、直結しているからだ。地方議員たちは、それぞれの部族を代表しており、国会議員になることにより、政府から予算を分捕って、自部族にばら撒く、というのが常識になっているのだ。
もし、国会議員にならなければ、そうしたことは出来ないし、自分のガードすら付けられなくなり、きわめて危険な立場に、おかれるということだ。従って、今までスンニー派の立候補予定者たちが、選挙ボイコットの姿勢を示していたのは、よりよい条件を引き出すためのものであった、ということであろう。
今回のイラク選挙で注目されるのは、かつて首相職にあった、イヤード・アッラーウイ氏が再度、首相のポストを狙っているということだ。このため、彼はイランに対しても、サウジアラビアに対しても、接近策を取っており、エジプトやヨルダン、カタールなども、訪問する予定になっている。
イヤード・アッラーウイ氏はシーア派だが、彼は世俗代表ということで、スンニー派とより近い関係に位置しており、シーア派のマリキー首相と、対抗する姿勢のようだ。
一方、マリキー首相はスンニー派が多数を占める、旧バアス党政権下の将校たちを、取り込む作戦を立てた。イラクのサダム体制が打倒された後、サダム色を一掃するということから、バアス党員は公職から追放されていた。なかでも軍人や秘密警察関係者は、最も危険視されていたのだ。
しかし、今回の選挙の前に、マリキー首相は旧バアス党員である、軍人や情報関係者を、仕事に復帰させることを決めた。その数は凡そ、2万人とされている。もちろん、マリキー政権の報道官はこの旧バアス党員の、現職復帰と選挙とは、何ら関係ないと説明している。
しかし、誰の目にも、この旧バアス党員の現職復帰の決定は、選挙に直結している、ということであろう。そして、不安なのはその結果、マリキー首相が選挙で勝利した場合、サダム・フセイン大統領と同じように、恐怖政治を部分的にでも、取り入れて行くのではないかということだ。