パレスチナの力量が試される西岸2聖地問題

2010年2月26日

 現在のイスラエル領土にも、パレスチナの西岸地区にも、多くの歴史的な遺跡が残っている。それらのほとんどは、単なる遺跡ではなく、宗教的な意味合いを持っているものだけに、問題が発生すると、解決は簡単ではない。

 今回、問題化したヘブロンのユダヤ族長たちの墓や、ベツレヘムのラシェルの墓は、ユダヤ教徒イスラエル人だけではなく、パレスチナ人イスラム教徒にとっても、宗教的意味合いを持つ場所であるだけに、今後の推移が注目される。

 ハマースのイスマイル・ハニヤ首相は、この問題に抗議して、西岸でインテファーダを起こすべきだ、と主張し始めている。マハムード・アッバース議長も問題を重視し、イスラエルに抗議するとともに、イスラム世界に支援を、呼び掛けていく方針のようだ。

 そこで問題なのは、イスマイル・ハニヤ首相を中心とするハマースや、マハムード・アッバース議長を中心とするファタハが、どこまでこの問題を国際化していけるのか、ということだ。

 同時に、どれだけのパレスチナ人を、この問題で結束させうるのか、ということだ。しかも、この問題を契機に、パレスチナの二つの組織は、それぞれに武力闘争にも訴えるだけの、心積もりがあるのかということだ。

 自分たちの犠牲は考えず、単に口先だけで、問題を叫びまくったとしても、何の変化も起こるまい。イスラエル側はやれるものならやってみろ、お前たちに何ができるんだ。何かをやる覚悟はあるのか、と思っているのではないか。

 パレスチナ人はこれまで、半世紀以上パレスチナ問題を叫び続け、世界中の好意を当てにしてきた。そして幹部たちは、私腹を肥やし続けてきた。しかし、問題は益々イスラエルの増長を許すだけで、何ら解決に向かっていない。それどころか、時間の経過とともに、状況はどんどん悪くなっている、というのが実情ではないのか。

 そうしたなかで、一般のパレスチナ人だけが、苦しみを背負い続けている。パレスチナをリードする立場の人たちは、いま一度真剣に自分たちの問題に、自分たちの力で取り組み、問題の解決を図る気持ちになる必要が、あるのではないのか。それが、イスラエルとの妥協であれ、あくまでも自説を貫く、武力闘争であれ。