IAEAの事務局長を務め、ノーベル賞を受賞した、ムハンマド・エルバラダイ氏が、エジプトに帰国した。
エジプトの現状を嘆く一部の人たちが、彼に直訴し、次の大統領選挙に立候補するよう、働きかけた。その働きかけに対して、ムハンマド・エルバラダイ氏はまんざらでもない、反応を示した。
結果的に、ムハンマド・エルバラダイ氏の帰国は、大きな話題となり、世界中で報じられた。しかし、ムハンマド・エルバラダイ氏を推す人ほど、本人が大統領選挙を、真剣に考えているとは思えない。
彼が選挙に立候補するには、幾つものハードルがあることは、すでにご報告したが、一番のネックは、エジプトの法律が彼の安全を、保障してくれるか、ということであろう。外国に居住し「エジプト人のサクセ・スストーリーの主人公」として振舞っている分には、ムバーラク大統領も彼を、称賛しよう。
しかし、彼の存在が少しでも、ムバーラク大統領にとって、不都合なものとなった瞬間から、彼は歓迎されない「危険人物」となろう。そのことを、身をもって体験したのが、アラブ連盟の事務総長職にある、エジプト人のアムル・ムーサ元外相だ。
アムル・ムーサ・アラブ連盟事務総長が、ムハンマド・エルバラダイ氏を、アラブ連盟本部の執務室に呼び、会談したが、その内容は全く開かされていない。しかし、想像するに、大統領選挙への出馬を、思いとどまらせるよう、説得を試みたのではないか。
外国に20年以上も暮らした、ムハンマド・エルバラダイ氏の考えは、すでに外国人と同じになっており、現在のエジプト社会が抱える、多くの問題を、現実として受け止めることは、できないだろう。
そうなると、彼が話し始めるであろうことは、理想であり、何ら現状の問題を解決することには、繋がるまい。下手をすれば、次期大統領選挙までの、繋ぎ、悪く言えば、噛ませ犬としての「噂の発信源」で終わるかもしれない。
そのことを、アムル・ムーサ・アラブ連盟事務総長は、ムハンマド・エルバラダイ氏に、話して聞かせたのではないか。