昨年末にイランを訪問した。述べるまでもなく、今のイランに観光客はほとんど訪れていない。そのため影響はあらゆる部分に、及んでいるようだ。
イランといえば、ピスタチオ、ペルシャじゅうたんがよく知られているが、そればかりではなかろう。観光地は歴史の古い国だけに、国内各所に散らばっている。それらの場所を訪れる、外国人観光客を狙った商売が、今は全く成り立たなくなっているのだ。
イランの首都テヘランにある、イステグラル・ホテルにある土産屋は、閑古鳥が鳴いていた。そこのじゅうたん屋のショウ・インドウを覗いていると、他のじゅうたん屋の主人が、うちの店も見てくれという。
時間をもてあましていたこともあり、覗いてみることにした。素晴らしいじゅうたんが、何枚か広げられ、いくらかと聞くと、日本で売られている値段の、半額程度の値段で売られている。細かい織りのシルクで、日本人好みのものだった。
そのなかの3枚が気に入って眺めていると、全部買っていかないかという。こちらは懐具合もあり、1枚というとじゃあ2枚買っていけ、残金は後でいいということだった。
イラン国内でペルシャじゅうたんが、日本よりも安いのは、やはり観光客が激減(皆無)しているからであろう。日本ではいま、あらゆるものが、輸入超過と不景気で、価格を大幅に下げているのだ。
シリアも同様に、多くの観光資源を持ちながら、長い間、観光客が極めて少なかった。それはいうまでもなく、対欧米関係が悪化していたからだ。シリアはテロ支援国家のひとつとして、イランや北朝鮮同様に、西側諸国から、敵視され続けてきていた。
最近になって、アメリカはシリアに大使を派遣することを決め、関係改善が期待されるようになってきている。このことは、シリアへの欧米からの観光客の訪問が、期待できるということだ。
シリアは東地中海沿岸の国であり、ギリシャ、ローマ、イスラムの各時代の遺跡が国内各地にあり、それ以前の遺跡も数多い。それだけに観光資源は多く、ツアーが組まれ、ある程度の観光地の整備がなされれば、観光は一大資源となりうる。
しかも、シリアは料理がうまい。シリア人独特のソフトな語り口と、うまい料理、素晴らしい遺跡が、世界に知られれば、この国は石油無しにも、十分やっていけるのではないか、シリア人は商売上手で知られた民族でもあるのだから。
民族主義の旗頭、アラブ革命のリーダー国と、あまりご利益のないタイトルで、自国を追い詰めることはないだろう、と思えるのだが。最近では、トルコもエジプトも、地中海沿岸の国は皆、その海岸線が黄金の砂漠に変わっている。
平和が金を生むということを、シリアはもう一度真剣に考えてみるべきではないのか、と思えてならない。アメリカのシリアとの外交正常化は、そのきっかけになるかもしれない。