相変わらずくすぶり続けるマブフーフ暗殺事件

2010年2月18日

 1月半ば過ぎに起こった、ドバイでの暗殺事件は、その後も真犯人探しが続いている。もっとも、最近になって有力な犯人は、イスラエルのモサドだという説が語られ、ドバイ警察によって暗殺容疑者が公表され、彼らが入国時に所持していたパスポートが、イギリスの偽造のものだったことも判明している。

 ドバイ警察はこのパスポートが偽物であり、彼ら容疑者の写真も公表しており、11人の関係者のうちの6人が、イスラエル在住だと発表されてもいる。イギリス政府は偽造パスポートの所持者が、イスラエル人であることから、その真偽を確かめるべく、イスラエル政府との連絡を、取り始めてもいる。

 イスラエルが犯行を行った可能性は、暗殺された人物マブフーフは、パレスチナのハマース組織の幹部であり、外国で武器を調達し、ガザに持ち込んでいた人物であることから、十分に疑いの根拠が、あるということだろう。

 しかし、この事件は派手過ぎるのではないか。容疑者はイギリスのパスポート保持者が6人、アイルランドのパスポート保持者が3人、ドイツとフランスが各1名だったということだ。パレスチナ人も2名が、容疑者として上げられている、という情報もある。

まさに、全ヨーロッパを揃えての、暗殺という感じがする。しかも映画並みに、彼らは別々にドバイに入国して、犯行に及んだということだ。当然、犯行後は別々に、ドバイから逃走したということであり、これだけの証拠が揃っていても、なんら事件の解決に進展はないし、誰も捕まっていない。

では結果的に、この事件が何を生み出すのかを考えてみたい。

:ハマースの武器調達資金調達担当責任者がいなくなった。

:そのことからイスラエルに対するテロは、沈静化することが期待される。

:もし、イスラエルが犯行を行ったのであれば、イスラエルは英独仏アイルランドなどから、激しく非難されよう。

:そのことは、ヨーロッパで広がっている、反ユダヤの流れに拍車をかけよう。

:世界的に、イスラエルは危険な国家、というイメージを広まろう。

:イスラエルのイラン非難に対する支持は、低下するのではないか。

:もし、マブフーフに対する資金と武器の提供が、イランであるならば、イランも非難を受けよう。

:しかし、マブフーフは金で武器を買っていたようなので、イランだけが武器の供給国とは限らなくなる。

  そうした諸々のことを考えると、イスラエルが犯人、と限定できない部分もある。イラン問題への制裁支持を、アメリカのクリントン国務長官が取り付けようと、必死の外交を展開しているなかで、イスラエルが何故そのタイミングに、マブフーフを暗殺する必要があったのか、疑問が沸くからだ。

  国際関係は実に複雑に出来ている。とんでもないところに、真犯人がいるのかもしれない、ハマースは最近でこそ、イスラエルのモサドによる犯行、と言い出しているが、当初は、パレスチナのファタハによる犯行だ、と語っていた。

  あるいは、武器取引をめぐり、死の商人同士のトラブルが、原因だったのかもしれないのだ。以前、パンナム・ジェットが爆破されたとき、麻薬商人武器商人と、アメリカの情報部、PFLPが絡んでおきたものであり、リビアは関係ないという情報が、流れたことがある。この事件も、モサド犯行説だけで、ファイルを閉じるべきではないのかもしれない。