イエメンでは戦闘が継続している

2010年2月 7日

 アラビア半島の南東端に位置するイエメンでは、戦闘が続いている。これまで何人の人が犠牲になったのか、正確な数字は何処からも、発表されていないのではない。つまり、イエメンでの戦闘は世界的には、あまり関心をもたれていない、ということのようだ。ましてや、国際問題の音痴の日本では、関心など生まれようもない。

 イエメンの戦闘は、歴史的には大分古いものだ。イエメン国家そのものが歴史的に浅く、建国した後も、地方では部族国家のようなものが残り、中央政府の影響を受けることなく、自治区のような形で残っていた。

 近代国家と呼べる体裁を整えていたのは、南北イエメンであり、イエメンは二つに分裂していた。北イエメンには西側が支援を送り、南イエメンにはソビエトが支援を送っていた。しかし、それもごく一部を支配統治していたに、過ぎなかったのではないか。

 北イエメンのサウジアラビアと隣接する地域には、アルホウシなる部族が居住しており、彼らはイエメンが南北に分裂していたときも、その後も、あるいはそれ以前から、自治区として存在していた。

 この地域には武器兵器の自由市場があり、アラビア半島だけではなく、各地から武器の買い付けに来ていたようだ。もちろん、そのほとんどのバイヤーたちは反政府組織や、テロリストだったということであろう。

 アルホウシ族に言わせれば、元々この地域はシーア派の王国であったところであり、中央政府には何の権限もなかった、ということになる。彼らに言わせれば、突然中央政府が、この地域もイエメン国家の一部だ、と宣言したようなものであろう。

 簡単に状況の推移を説明すると、中央政府の関与が、緩やかなときはよかったのだが、次第に関与が強まると、当然のこととして、アルホウシ族の反発が強まった。そして戦闘が起きた、ということであろう。

 サウジアラビアはこのイエメンの内紛を、利用したのではないか。アルホウシ族が居住する地域は、サウジアラビアとイエメンとの間で、領有をめぐり複雑な状況にある処だ。このため、アルホウシ族の蜂起を、サウジアラビアは利用し、イエメン政府を支援することにより、問題を拡大し、イエメン紛争への介入を、図ったのではないかと思われる。

 サウジアラビアはアルホウシ族がシーア派であることから、この問題は、イランがアルホウシ族を支援し、イエメンとサウジアラビアの不安定化を狙った、と主張してもいる。そのことは、アメリカを始めとする西側諸国を、味方に付けるうえで、好都合なのであろう。

 現在ソマリアの海賊が、世界の船舶を襲うという事件が頻発し国際問題となっているが、イエメンがイランの影響受ける状況になったり、ソマリアの海賊と連携するようなことになれば、ますますソマリアとイエメンとの間にあるバーブ・ル・マンデブ海峡や、イエメン沖海域は、危険になることが、懸念されるからだ。

 しかし、このサウジアラビアのイエメンへの介入は、将来的には、サウジアラビア内部の混乱に繋がっていく、可能性があるのではないか。サウジアラビアにはシーア派が、差別された状態で生息してきている。そして、スンニー派のサウジアラビア国民のなかにも、体制に対し、強い反発を抱いている人たちが、いるのだ。

 サウジアラビアはアルホウシ族の地域に対する、空爆を継続してきたが、十分な成果を上げていないようだ。それどころか、簡単な武器で抵抗するアルホウシ族によって、100人を越えるサウジアラビア兵が、殺害されているのだ。

 述べるまでもなく、サウジアラビア国内では、この戦争による自軍の犠牲を、正確には報じていない。しかし、サウジアラビア国民がその実態を知るのは、時間の問題であろう。それがどういう状況を、サウジアラビア国内に生み出すのか。あるいはアルホウシ族の人たちの間に、多数の犠牲を生み出してイエメン内紛は、沈静化するのかもしれないが。