アラブ諸国では外国企業の誘致にフリー・ゾーンを設置する国が多い。エジプトを皮切りに、ヨルダンやシリア、レバノンなど、各国がフリー・ゾ-ンの設置を進めた。
そして、遂にリビアもフリー・トレード・ゾーンの設置を発表した。これは同国の海岸線に面した場所に、設置されることになった。このフリー・トレード・ゾーンでは、10年間の免税がなされ、物資や資金の移動が、自由になるということだ。
この計画の責任者は、サーイデイ・カダフィで、石油以外の産業振興を、図ることが目的のようだ。観光業や石油以外の地下資源の開発も、進められる計画だ。この計画は、カダフィ大佐が許可をし、全国人民会議が認可し、彼の兄弟で実質的首相(カダフィ大佐の次のポスト)であるサイフ・ル・イスラーム氏も許可しているということだ。
問題は、このフリ-・トレード・ゾーンが、うまく機能するかどうか、ということだ。これまで、アラブ各国で設置されたフリー・ゾーンは、一部を除いて、あまりうまく機能していないのではないか、と懸念される。
フリー・トレード・ゾーンもフリー・ゾーンも、外国の企業が進出してきて産業を興し、就労機会を増やし、技術移転が行われ、収益が倍増することを狙ってのものだ。つまり、他人の努力と資金と技術で、寝ていて儲けよう、という発想なのだ。
そのためには、海岸に近い足場のいい場所に、このゾーンを設置することが、第一条件であり、そのゾーンには、建物や港湾施設はホスト国が建設することに加え、電気、水、ガス、下水施設などが、完備していなければなるまい。
そのことに加え、良質で安価な労働力の供給がなされること、法律的に進出企業が自由を認められることなど、各種の条件が整わなければなるまい。
しかし、アラブ諸国では権限が、法よりも前に出る場合があり、建前と実際が異なる場合が、多々見受けられる。このため、思いのほか外国企業の進出が、進まない場合が多いのだ。
リビアがフリー・トレード・ゾーンを設置した場合、外国の製品が大量に持ち込まれ、一大マーケットが出来ることは間違いなかろう。しかも、リビアはアフリカの北の玄関口でもあるし、ヨーロッパにも近い。
しかし、ほとんどの労働者従業員は、外国人ということになるのではないか。リビア人にとっては購買意欲をあおるだけの、設備に終わるのではないか、と懸念される。しかも、リビアは他のアラブ諸国に比べても、人治の度合いの強い国であり、スムーズに事が運ぶのか否かが今のうちから懸念される。