エジプトは不思議な国で、いちど不動産の賃貸契約をすると、借りた側が契約破棄するまでは、家主はその契約を破棄出来ないことに、なっているということだ。しかも、最初に契約した家賃は、未来永劫に、借主の孫子の代まで続くというのだ。
そのため50年以上も前に契約した、マンションや店舗の賃貸料が、現在でも適用され、ただ同然の値段で、貸されているということだ。当然困るのは家主、これまで泣き寝入りするしかなかった。
ところが、この問題解決には唯一の道があった。それは、そのビルを売却し持ち主が変わることだ。そうなると、賃貸契約者ではない新しい持ち主は、新しい家賃で貸すことが出来るし、同じ相手に賃貸することを、断ることも出来るのだ。
そこに目を付けたのがエジプトの大金持ち。古い目抜き通りのビルが、こうした事情から薄汚れ、誰も修理しようとしないで、そのままになっていたが、ここに来て、家賃の安さに耐えかねた家主が、ビルを手放すことになった。
事情が事情であることから、ビルの価格は極めて安いものとなった。そして、新しい持ち主となった人物は、このビルを修理し内部を大幅に改造して、新しい借り手を探すことになった。
エジプトのカイロには王国時代や、イギリス統治時代に建造されたビルが、目抜き通りに並んでいるが、実にしゃれた外装のビルが多い。すすけて古びているが、目を凝らしてみると、パリのシャンゼリゼ通りを思わせるような、造りなのだ。それがここ2年ほどで蘇ることになろう。
アゼルバイジャンのバクー市を昨年訪れたときも、同じ光景を目にした。1920年代からのしゃれたビルが、10数年前に訪れたときは、薄汚いビルだったが、今回訪問したときは、改装が行われきれいなビルに様変わりし、世界の有名ブランドの店が、軒を連ねていた。
エジプトのカイロが、あと2年ほどで同じ変化を示そう。楽しみだ。