イスラエルがトルコの大使を侮辱する、という問題が発生し、そのことが、トルコの与野党支持者たちを結束させる、という現象を生み出したことが、伝えられてきている。
そもそもの、ダニ・アヤロン・イスラエル外務次官の非礼の原因は、トルコで放映されている、テレビ・ドラマが原因だった。簡単に言ってしまえば、ガザでのイスラエル軍の非人道的な行動を、非難する内容のものだ。
しかし、それは相当ダニ・アヤロン・イスラエル外務次官にとっては、不愉快なことであったのであろう。その結果が非礼事件であり、イスラエルとトルコは過去に例のない程の危機的な状況に陥った。
結果的には、イスラエル側が文書で謝罪し、トルコ政府はそれを受け入れた、ということで一件落着したようだが、双方の不満は今後も、くすぶり続けるだろう。トルコの人権団体は、詫びに来るバラク国防相を、逮捕しろと叫んでみたり、イスラエルのツビ・リブニ女史は「トルコはどっち寄りなのかはっきりしろ。」と、全く理性的でない発言をしている。
トルコは中立的立場を維持し、イスラエルとアラブ・イランとの仲介役を、果たそうとしているのだから、どちら寄りかを鮮明にするはずがないのだ。
トルコもイスラエルも、お互いが感情的になり、民族意識が表面化してきている。その二国だけではなく、アルジェリアでも民族派とイスラム主義者たちが接近し、外国軍の駐留の動きに、反対する行動を取り始めている。
イエメンでも同様に、イスラム学者たちを中心に、外国軍の駐留に反対する動きが、起こり始めている。イランでも科学者の爆殺事件をきっかけに、体制派と反体制派が、久しぶりに葬儀に参加している。
その流れのなかで、アハマド・ネジャド大統領は科学者の爆殺事件について、シオニストの手口だと非難している。彼はまた、西側諸国が中東諸国を占領する気だ、とも警告している。
一見、脈絡がなさそうに見える、これらの断片的な情報も、こうして集めてみると、その底辺に共通する流れが、あるように思える。つまり、中東諸国のなかではいま、イスラム主義の動きとだぶった形で、民族主義の動きが、活発化してきているのではないかということだ。
そして、その傾向は、次第に強まっていくのではないかと思われる。その流れの方向の先には、新たな現象、出来事が姿を現してくるということであろう。今のうちから、それを予測しておくべきではないのか。