1月12日の朝、イランの物理学の科学者マスウード・アリー・ムハンマド教授が、自宅から出勤しようと思って玄関を出、車に乗る段階で近くにあったオートバイに積んであった爆弾が爆発して、死亡するという事件が起こり、イランとアメリカとの間で非難合戦が起こっている。
イラン政府はこの爆殺を、アメリカ・イスラエルによるものだ、と非難している。マスウード・アリー・ムハンマド教授が、物理学の科学者であったことから、アメリカ・イスラエルは、彼を爆殺したのだとしている。
その結果、「イランの核開発を遅らせようとしたのだ。」というイラン政府の説明には、ある程度の説得力があろう。しかし、彼は核開発に直接関係する、部門の専門家ではなかったということだ。
他方、アメリカ側はマスウード・アリー・ムハンマド教授が、ムサビ大統領候補の支持者であり、大学でも改革派を支持の立場を、示していたことから、今回の爆殺の犠牲になったのだ、と説明している。
これだけでは、誰が犯人なのかは、決定付けることはできない。しかし、あるいは、と思わせる情報が出てき始めている。それは、ハタミ師とラフサンジャニ師が、今回の爆殺事件について、犯人像を明らかにはしていないが、微妙な発言をしているのだ。
両師は今回の爆殺事件が起こることによって、政府派と反政府派との間で、対立が激化し、流血が増すだろうと予測している。ハタミ氏は「手の汚れたものが今回のテロを起こした。その者たちはイランの敵だ。」と語っている。
ラフサンジャニ師は「臆病なテロリズムだ。新たな緊張の時代の始まりだ。」と語っている。イラン国内で流血衝突が増加していって喜ぶのは、政府派でも反政府派でもあるまい。つまり、「外部の手が関わっていた。」とハタミ師は言いたいのであろうか。
ラフサンジャニ師の発言は、もう一歩踏み込んでいるかもしれない。それは彼が「臆病な」という表現を用いていることに起因する。つまりブッシュ大統領が常々口にしていた「臆病者」という表現は、イランがアメリカを非難するときにも、使われていたのだ。
もう一つの判断の材料になるであろうと思われることは、これまでイラン政府が反政府側の人間を、爆弾で暗殺したと思われるケースが、皆無だということだ。真相はまだ分からないし、将来も明らかにならないかもしれない。現段階でできる推測を書いてみた。