昨年暮れに、イギリスで計画されていたユダヤ人会議に、元外相のツビ・リブニ女史が参加する予定だった。
しかし、彼女のユダヤ人会議参加は、ある事情から、急遽キャンセルされることとなった。それは、彼女が1997-8年に起こった、イスラエル軍のガザ攻撃時に、外相であったことと関連している。つまり、イギリス内部でもこの戦争が不当なものであり、関わっていた人たちは、戦争犯罪人の容疑があるとしたのだ。
ツビ・リブニ女子は場合によっては、イギリスで逮捕され、取り調べられる可能性があったのだ。彼女はイギリス国内で、身を隠し帰国した。イスラエル政府はこのことについて。イギリス政府に抗議し。イギリス政府も一応は。抗議を受けれ、次回の彼女のイギリス訪問時には。問題ないと発表している。
しかし、ほとんど同じケースが、再度発生した。イスラエルの軍の佐官尉官クラスの代表団が、イギリスを訪問しようとしたところ、イギリス側では逮捕されることがありうる、という判断が出たからだ。イスラエル側の問い合わせに対し、イギリス政府は彼らが逮捕されない、という保証はできない、と回答したのだ。結果的にイスラエル軍の代表団は、急遽イギリス行を取りやめることとなった。
ガザ戦争以来、イスラエルがイギリスを始め、ヨーロッパ諸国で直接間接の、冷たい対応を取られ始めている。こうした状況について、イスラエルからは反ユダヤ、反シオニズムの復活だ、というヨーロッパに対する批判の声が、聞かれ始めている。
イスラエルにとって頭痛の種は、これだけではない。アメリカが経済苦からか、これまでは輸出しなかったような兵器を、エジプト、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ヨルダンなどといったアラブ諸国に、輸出し始めている問題があるのだ。
エジプトはイスラエルとの、外交関係を開いてはいるものの、これまでイスラエルとアラブとが戦った4、度の中東戦争の主役であり、イスラエルにとって、最も手強い相手だ。それが最新の兵器を持つことになるのは、イスラエルにとっては、潜在的脅威が高まるということであろう。
サウジアラビアの場合は、現体制が打倒され、アラブ民族主義的な体制が生まれた場合、サウジアラビアが所有する兵器は、その矛先をイスラエルに向けられる、と考えて当然であろう。しかも、サウジアラビアはウサーマ・ビン・ラーデンをはじめとする、多くのイスラム過激派を、生み出している国でもある。
ヨルダンも同様、王制が打倒されれば、ヨルダンの人口の80パーセント程度が、パレスチナ人であることから、銃口がイスラエルに向けられる、という悪夢は、イスラエル人にとって、拭い去れるものではあるまい。
イスラエル人の間の不安が昂じていくと、過激な意見が尊重されるようになるのは世の常だ。判断ミスが生まれないことを望みたい。