アメリカのイエメン問題介入の真因

2010年1月 4日

 新年早々の予測で、イエメンは結果的に、あまり問題にならないだろうと書いた。しかし、その後の動向を見ていると、明日にでもアメリカが、イエメンで戦争を始めそうな、雰囲気になってきている。

 イエメンでは、アメリカ、イギリスに次いで、日本までもが大使館業務を停止している。加えて、フランスも大使館業務を停止する、という情報が流れている。つまり、主要な西側諸国は、早々とイエメンから逃げ出した、ということであろうか。

 アメリカではアフガニスタンに対する、攻撃が実行される大分前には、ランボーンの活躍する、アフガン映画が製作され、イラク攻撃の前には、サダムらしき人物を、悪者として取り扱った映画が、製作されている。

 そうだとすれば、イエメンの場合も、攻撃が近いということであろうか?イエメンのアメリカ大使館が襲撃を受け、発砲を許可した軍司令官が、後にアメリカで裁判にかけられる、といった内容の映画が、数年前に製作されている。

 アメリカが戦争を始める前に、敵国の大統領や国民を、悪者に仕立て上げた映画が、製作されているとすれば、イエメンの場合もそうなるということであろう。アメリカが戦争前に、映画を製作するのは、大衆操作がし易いからであろうか。

 それでも、イエメンではイラクや、アフガニスタンで起こったような状況は、起こらないだろうと思っている。それは、イエメンの地形のほとんどが山岳地帯であり、戦車や自走砲などは、全くと言っていいほど使用が困難だからだ。

唯一、アメリカ軍にできるのは、空爆であろうが、空爆すべき敵はイエメン軍ではなく、あくまでもイエメン政府から分離独立を、勝ち得ようとしている、アルホウシ部族でしかない。

しかも、彼らの居住地域は限定されており、イエメン全土を戦場にするわけにはいかない。そうなると、アメリカ軍が戦闘を開始したとしても、極めて限定的なものになろう、というのが私の推測だった。

それでは何故、アメリカが今の時期に、イエメンをアルカーイダの一大拠点として、軍事力までも行使しようと、考えているのであろうか。それは、このイエメン内紛に、サウジアラビアが絡んできていることに、起因しているのではないか。

あるいは、サウジアラビアに、イエメンを軍事支援しろと、アメリカが助言したのかもしれない。それにしても、サウジアラビア軍のパイロットは、相当腕を上げたものだと驚嘆している。一説には、サウジアラビア空軍パイロットの多くが、パキスタン人だという説もあるが、アメリカ人を含む、外国人のパイロットが、搭乗している可能性は高いだろう。

サウジアラビア軍がイエメン軍を支援し、戦闘に参加したことで、イエメン内紛は、サウジアラビアとイエメンの間に、元々あった領土問題を、表面化するきっかけになる、可能性があろう。その結果、サウジアラビアはより一層の兵器を、アメリカやイギリスから、輸入しなければならなくなるだろう。

結果的に、サウジアラビアのイエメン介入は、サウジアラビア国民の間に、反政府の機運を高める可能性もあろう。そうなれば、サウジアラビアは王国の安全のために、アメリカ、イギリスの力を借りなければ、ならなくなるのではないか。

アメリカにとって、今回のイエメン問題は、イエメン内紛やアルカーイダ対策もさることながら、より一層、サウジアラビアに対する影響力を、強めることも含まれているのではないか。

数年前に、アメリカの考える新中東地図、という原稿をこの中東TODAY欄に掲載した。その地図には3分割された、サウジアラビアが描かれていた。そして、確かイエメンの領土は拡大していた。

サウジアラビアはメッカを中心とするイスラム国、アルカテイーフを中心とするペルシャ湾岸沿いのシーア派の国、そして何もないアラビア半島の中部のサウジアラビアだったと記憶する。

いずれが正解かは別に、アメリカはそこまでやるのだろうか。中東の友人たちの多くは、今回の航空機爆破未遂事件に始まる、イエメンへのアメリカの関与に付いて 強い疑いの目で成り行きを見守っている。まだまだ想像は膨らむのだが、この辺で止めておいた方がいいだろう。読者の想像と判断の、参考になれば幸いだ。