イランで絞首刑囚を逃亡させる事件が起きた

2009年12月26日

 つい最近、イランから短いニュースが伝えられた。BBCが伝えたものだったが、これは実に興味深いものだった。なぜならば、絞首刑に処せられるはずの犯人二人が、親戚たちによって(大衆という表現もなされている)処刑を妨害され、逃亡させられたからだ。

 犯人の名はエスマイル・ファスイポールとムハンマド・エスファンヂアルポールで、政府側の発表によれば、二人は武器の密輸を行っており、銀行強盗も行っていたということだ。

 イランのケルマン州で処刑を行おうとしたところ、親族などが発砲し始め、死刑囚は親族5人と共に、処刑場から逃亡したということだ。しかし、2時間後には治安警察によって、バンダル・アッバースに通じる経路で再逮捕され、シルジャンで処刑されたということだ。

 この救出劇では、銃弾によるものであろうが、25人が負傷したと伝えられている。多分に治安軍側にも、死傷者が出たものと思われるのだが、そのことについては伝えられていない。

 このニュースを目にして感じることは、イランがいまだに部族、親族の結びつきが強い社会であるということだ。部族の仲間が処刑されそうになると、彼らは立ち上がり、軍や警察に対してでも、抵抗するということだ。

 もうひとつ考えられるのは、イランの体制内部や社会に、やはりある種の緩みが発生してきている、ということではないだろうか。イランでさる6月に行われた大統領選挙以来、選挙結果に不満を持つイラン国民による、大規模デモが頻発している。

 イランのアハマド・ネジャド大統領は今後、政治的な反体制の動きに対してだけではなく、社会的たがの緩みから、犯罪が多発してくることに対しても、警戒が必要になっていくのではないか。