ネタニヤフ首相カデマ党のリブニ女史に内閣入り呼びかけ

2009年12月26日

 現在、イスラエル政府与党の中心をなしている、リクード党のネタニヤフ首相が、野党のカデマ党党首リブニ女史に、内閣入りを呼びかけた。つまり、与野党で新しい内閣を構成し、イスラエル国民の意識を統一しようということだ。

 この呼びかけをネタニヤフ首相が決断した裏には、現在イスラエルが置かれている国際環境が、同国にとって極めて厳しいことがあろう。ガザ戦争以来、ヨーロッパ諸国は押しなべて、イスラエルの強硬なパレスチナ対応に、極めて批判的になっている。

 ヨーロッパ諸国にとっては、パレスチナ問題に加え、イスラエルがイランに対し、軍事攻撃を仕掛けるのではないか、という懸念も大きいだろう。もしそんなことになれば、そうでなくとも困窮を極めている世界経済は、破滅的な状況になりかねないからだ。

こうしたことから、ヨーロッパ社会に潜在的にあった反ユダヤ感情が、最近になって露骨に、表面に出始めてきていることも事実だ。そのことが顕著に表面化したのは、ユダヤ人による(イスラエルも含む)臓器密輸移植の問題だった。

 加えて、イスラエルの最大の味方である、アメリカ社会のなかにも、イスラエルに対して厳しい見方をする人たちが、次第に増えてきていることも、イラエルにとっては、大きな不安であろう。

 中東地域にあって、唯一良好な関係にあったトルコとの関係が、ギクシャクしてきていることも、イスラエルにとっては不安であろう。トルコはあくまでも、中東問題の公正な仲介者の立場を、維持しようとしているだけなのだが、イスラエルにはそうは思えないのであろう。

 シリアのアサド大統領もイランのアハマド・ネジャド大統領も、トルコが公正な仲介者であることを、高く評価している。このトルコの仲介努力に、真摯に応えなければ、イスラエルは国際社会のなかで、ますます孤立していくのではないか。

 そこでネタニヤフ首相は、イスラエルの外交を大きく変更していかなければならない、と考え始めたのではないか。

 このネタニヤフ首相の呼びかけに対し、リブニ女史もある程度好意的に、受け入れるのではないかと思われる。一説によると、カデマ党内部でのモファズ元国防相との政治闘争で、彼女が弱い立場に回りつつあるからだ。

 そのことに加え、窮地に立っているネタニヤフ首相が、以前に比べ、少し穏健化してきているため、リブニ女史はネタニヤフ首相と組し易くなっている、と見ている人たちもいる。

 これとは別に、ネタニヤフ首相はカデマ党に内閣入りを呼びかけることにより、カデマ党を解体吸収することを狙っているのだ、という意見もある。こうしたネタニヤフ首相に対する警戒的な見方が、アラブのマスコミには登場している。

 しかし、現実はネタニヤフ首相が国際的に追い込まれているために、考えた策であるというのが正解ではないか。