エジプトのガザ国境鉄壁建設は戦争行為

2009年12月25日

 エジプトからガザ地区に、物資や武器が搬入されることによって、イスラエルはガザからロケット弾攻撃を受けてきた。このため、イスラエル政府はエジプト政府に対して、エジプト領土からガザ地区への、密輸を完全に阻止するよう、強く要求していた。

 ガザ側からエジプト側には、秘密の地下トンネルが掘られ、食料、医薬品、建設資材から武器までもが、運ばれていたからだ。しかし、この秘密トンネルを通過する以外には、ガザにはイスラエルが許可するもの以外に、物資が搬入できなかったのだ。燃料も食料も建設資材も、全てがイスラエル政府の許可の範囲内に、とどめられていたのだ。

 当然、イスラエル側はガザの住民が満足するだけのものを、許可しては来なかった。このため、ガザ住民にしてみれば、地下トンネルを掘ることは、当然の対抗手段だった。しかも、そこからは武器も、搬入されていたのだ。

 厳しいイスラエル側の密輸阻止要求に対して、エジプト政府は今回、秘密トンネルが掘られている地域に、鉄のボードを打ち込むことによって、秘密トンネルの遮断をすることになったのだ。

 それは、ガザ住民にしてみれば、食料や医薬品の搬入ルートを断たれることであると同時に、イスラエルに対する抵抗闘争を、断念させられることになるのだ。このエジプト政府の決断に、最初に噛み付いたのはダマスカスにいる、ハマースの幹部ミシャアルだった。彼はエジプト政府の決定を、「戦争行為と同じだ。」と激しく非難し抗議している。

 続いて、シリアに拠点を置く、パレスチナ抵抗連合も同様に、エジプト政府の決定を非難している。曰く「不法な決定であり、非人道的であり、道徳無き行為だ。」としている。

 一連のパレスチナ側のエジプト非難で気にかかるのは、このエジプト政府の決定により、今後、パレスチナ抵抗組織がエジプトを、イスラエル同様の敵と位置づけ、攻撃目標にしていくのではないかということだ。そうなれば、エジプト国内で、テロが発生する可能性があろう。それは、エジプトの観光産業にとって、大きな痛手となろう。

 来年のエジプト旅行は、エジプトやパレスチナ、中東全域の、動向をよく見てから、決める方が安全なのではないか。中東地域は世界の中でも、最も不安定な地域なだけに、その程度の注意を払うことは、当然必要であろう。