トルコとイスラエルとの関係が悪化している、と言われて久しい。それは大まかに言うと、今年1月にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されたダボス会議の席で、トルコのエルドアン首相がイスラエルのペレス大統領に激怒したことによる。
ペレス大統領に対し面と向かって「ガザ戦争の責任がある、犠牲者が出たことに責任がある。」と非難して席を蹴って会議場から退出をしたことや、NATO の軍事訓練にイスラエルが参加することから、参加を拒否したことなどによるものだ。
しかし、トルコのイスラエルに対する厳しい対応は、トルコがイスラエルとの関係悪化を、希望していることからのものでは無いと思われる。トルコがイスラエルとの関係を、現段階で悪化さえることは、決して得策では無いからだ。
トルコがイスラエルに対して、厳しい対応を取っているのは、トルコがイスラエルとシリアやイランとの、仲介役を勤められるように、中立的な立場を確立しようとしてのことであろう。そして、湾岸諸国からの投資を期待しての、アラブ寄りの姿勢を示しているものだと思われる。
そうした推測を肯定するような、ニュースがトルコから伝わってきた。それは、トルコのダブトール外相がイランの長距離ミサイルに、懸念を抱いているというニュアンスの発言をしたことだった。イランの長距離ミサイルについては、トルコはもちろん、東ヨーロッパ諸国やイスラエルが射程距離に入るものであることから、トルコが懸念を述べても、なんら不思議ではない。
しかし、このことでトルコがイランに対して、懸念を抱いているという立場を明らかにすることは、イスラエルにとっては、極めて心地よいものであろう。つまり、トルコはイスラエルを敵視し、イランに接近しているのではない、あくまでも客観的な立場を、維持しているのだということになろう。
アメリカがこれに先立って、ポーランドに設置しようと思っていた、長距離ミサイル・レーダー・システムを、トルコ国内に移すことによって、ロシアとの緊張緩和を図ろうと考えたが、今後、トルコがこのミサイル、レーダー・システムを受け入れるのか否かが、もう一つのハードルとなろう。
現段階では、トルコのダブトール外相は、NATOの一員として検討するが、それがNATOにとって必要なものであるか否かを、確認したうえで決定すべきことだとしている。
トルコはNATOのメンバー国である以上、あるいは受け入れなければならないかもしれない。しかし、その場合はアメリカの要請に基づいて受け入れるのとは、トルコが周辺諸国に与える印象と影響とは、大分異なることになるのではないか。まさにお見事といった感じがするではないか。