石油価格や為替レートは極めて敏感なもの

2009年12月20日

 イラクとイランの国境に近い、イラク側のファッカ油田が、イラン軍によって占拠されたという情報が飛んだ。発信元はサウジアラビアやクウエイトが運営している、アルアラビーヤ放送だったということだ。この情報が出るとたちまちにして、石油価格が上昇し、ドルが他の通貨に対して高値をつけた。

 果たして本当にイラン軍は、イラクの国境沿いの油田を占拠したのだろうか。このことについては最初のうちは、イラン側がその様な事実はないといったニュアンスの発表をしていたが、後になって事実であることを認めている。

 ただし、この地域は以前からイランとイラクとの間で、領有権が不明確であったとし、イラン側のものだということのようだ。

 そうであるとすれば、イランは実際にイラク領土内に軍事侵攻し、イラクの油田を占領したということだ。そして、それはイラン側の権利である、と主張しているということだ

 しかし、イランの軍部は当初、このことを否定する発言をしているし、イラの内務省も同様に、否定する発言をしている。一体何がイランをしてこの時期に、イラクへの軍事侵攻と、油田の占拠をさせたのであろうか。

 イランとの国境沿いにあるファッカ油田については、イランとイラクとの間で展開された、イラン・イラク戦争の後も、未解決の問題として、両国の間に横たわってきていた、

 従って、イラン側からすれば、そのファッカ油田に軍を送り、イランの国旗を立てたからといって、それほどの問題はないということであろうか。事情通たちはこの問題について、サウジアラビアとクウエイト、そしてアメリカとの連係プレーによるものだとしている。

 事実はどうか判らないが、イラン軍がファッカ地域に入ったことを、ことのほか大きく報じ、あたかもイラン軍がイラクに軍事侵攻し、イラン・イラク戦争が再発するような雰囲気を作る。

 結果的に石油価格は上昇し、ドルも上がる。それは世界中でいま、がむしゃらに石油の買いあさりを行っている中国にとって、大きな痛手となるということのようだ。

 石油価格が上がることは、サウジアラビアやクウエイトには好都合であり、アメリカはドルが上昇することで、メリットを得る。「非常時に強いドル」というイメージが蘇ってくるというものだ。

 他方、中国は石油価格の上昇で、不安定化に向かっている経済は、一瞬にして奈落の底に落ちていく、ということであろうか。