GCC会議・経済とイエメン内戦討議の意味

2009年12月14日

 湾岸諸国のひとつクウエイトで、湾岸首脳会議が開催された。その会議のテーマは述べるまでもなく、世界の経済動向と湾岸諸国の経済動向についてだった。そのなかには、ドバイの急激な経済の落ち込みに対する、各国の支援も含まれていた。

 ドバイが落ち込んだのを、放置しておいては自国にも影響が現れる、という認識が湾岸諸国には、きちんと実感としてあるようだ。アメリカのサブ・プライム・ショック以来、世界経済は悪化の一途をたどっており、ドバイ・ショックはそれに輪をかけて、世界経済を悪化させると考えているからだ。

 しかし、だからといって、世界で最も経済状態のいい湾岸諸国だけで、世界経済を救うことは出来まい。湾岸諸国はこれまで懸案となっていた、湾岸共通通貨についても話し合った。

湾岸諸国の間に、共通の通貨が誕生するということは、実は大きな意味がある。これまで、ほぼドルとペッグ状態であった湾岸各国の通貨が、新通貨(共通通貨)の誕生により、ドルとの関係をどうするかということが、取りざたされるからだ。

もし共通通貨が誕生すれば、それは多分に各種の通貨との、連結したものとなるだろう。従ってこれまでのような、ドル一辺倒の形にはなり難いだろう。だからといって、ドルを完全に切り離すわけではあるまい。そんなことをしたら、湾岸各国は大きな損失を、蒙ることになるからだ。

もうひとつの湾岸首脳会議のテーマは、イエメンで起こっている内戦だ。イエメンの国内で、イエメン政府軍とアルホウシ族(シーア派)との間に、戦闘が始まって長いが、いまだに解決していない。

アルホウシ族がイエメン軍の攻撃から逃れるべく、サウジ国内に逃げ込んでいるらしいのだが、そのことを口実に、サウジアラビア軍がイエメン軍の側について、アルホウシ族の戦闘員と戦闘を展開している。サウジアラビア軍は空爆に加え、陸軍も参戦しているのだ。

このイエメンの戦闘はアルホウシ族がシーア派であることから、イランが注意深く、推移を見守っている。イランのマスコミが比較的細かい情報を流しているのだ。サウジアラビアやイエメンは、イランがアルホウシ族に加担していると非難しているが、具体的な証拠らしいものは、出てきていないのではないか。(イランはサウジアラビア軍が白燐弾を使用していると報じている)

結果的に、イエメン内戦は湾岸諸国にとって見れば、イランとサウジアラビアの代理戦争、という認識になってきているようだ。しかし、サウジアラビアを除く湾岸諸国にしてみれば、イランはとても敵と捉えるべき相手ではない。

従って、サウジアラビアの軍事行動を非難しないまでも、湾岸各国はイランとの、独自の関係調整を始めている。カタールやアラブ首長国連邦、バハレーンなどは、特使を送ってイランとの穏便な関係維持に、努力しているようだ。

そうなってくると、今後サウジアラビアが湾岸諸国のなかで、浮き上がってくるのではないか。サウジアラビアはシーア派を、ことのほか敵視しており、イラクに義勇軍を送り、テロ活動をさせているという情報がある。それはほぼ間違いない話であろう。ここでもイランとの間に間接戦闘が行われているのだ。

サウジアラビアがシーア派に対して、異常なまでの警戒心を抱いているのは、サウジアラビアの油田地帯の住民が、ほとんどシーア派で占められていることに、起因しているのではないか。将来、サウジアラビアのシーア派が、分離独立運動を起こした場合、サウジアラビアは大変な国内問題を、抱えることになるからだ。

イエメン内戦が、サウジアラビアとイランとの間接戦争であること、その問題に湾岸諸国は関与したくないということ、そのことから始まったサウジアラビア以外の湾岸諸国の、対イラン外交の活発化、そして湾岸諸国の独自外交は、アメリカとの関係も複雑にしよう。イエメン内戦はとんでもない結果を、もたらすことになるかもしれない。