今年の3月に、ヨルダンで日本財団が開いた国際会議に出席した、イラクのバクテヤルさんに招かれ、5月にイラクのキルクークで彼が主催した、国際会議に参加した。
そのお返しではないが、バクテヤルさんを日本に招待して、大いに語ってもらおうということになり招待した。彼はキルクーク出身のクルド人、奥さんは現役のイラク国会議員の活動家(アラブ人)で、本人も元大臣職にあった人だ。
彼の訪問を機会にいろいろのことを聞いたのだが、彼はミテラン大統領夫人のアドバイザーもしていたということだし、イギリスの国際機関とも縁があるということだった。
キルクークで開催された会議は、イタリアの企業集団がスポンサーになっていたことを考えると、彼の行動力もさることながら、ヨーロッパ諸国はこれはという人材を、世界中で探しており、使えると思うと即座に支援体制を組んでいる、ということだと痛感した。
日本の場合にそのような戦略的な発想が、あるのだろうか。外国で日本が主催する会議は、結局日本人参加者同士が褒めあって、外国人との関係が深まるようなことは、皆無と言っていい。
さてそのバクテヤルさんが、日本財団ビルで講演をしたが、内容はイラクの復興が進んでいること、空港設備が各地で整い、外国とのアクセスが開かれたこと、なかでも、クルド自治区の首都エルビル市は、復興が急速に進んでいることなどを語っていた。
イラク国内では、衛星テレビ局が沢山できていることと、新聞が200紙以上も発行されており、報道の自由が確立したこと、この状況はサダム時代には、考えられなかったと語っていた。
来年3月に予定されている国会議員選挙については、人口調査に基づいて、公正なものになることを希望していると語り、そのことが将来の、イラク国内の安定に直結するとも語っていた。
人口調査による議員数の決定、その上での公正な選挙、結果的に石油収入の公平な配分が行われることが、今のイラクにとって、最も重要なことであろう。しかし、そうした公正公平を望まない人たちもいる。
それはイラク国民のなかばかりではなく、外国にもそういう国があろう。そうした勢力が、選挙を何とか邪魔したいということから、選挙日の決定に合わせて、大型テロ(127人死亡)が起こされたのであろう。
バクテヤルさんは家族親族のなかで、サダム体制の犠牲になった人の数が、60人だと語っていた。それにもかかわらず、ある人が「サダム体制は大量破壊兵器を持っていなかったのに、アメリカによって倒されたことをどう思うか」という間抜けな質問をしていた。
質問者はイラク人なかでも彼がクルド人であることなど、まったく考慮せず、自分が期待する「アメリカの攻撃は不当であったという返事を、期待したのであろう。国際感覚も人の情もない人だということだ。日本人は平和ななかに長く暮らし続けて、人の痛みに無感覚になっているのであろうか。それでも、バクテヤルさんは質問者のプライドを傷つけないように、婉曲な答え方をしていた。
彼は最後に、主体的に生きること、ポジテブな発想をすることの重要性を、訴えていた。そして、私にはユーモアはどのような状況にあっても、忘れてはないらないと語ってくれた。