このところ、イスラエルやユダヤ人をめぐる、幾つもの推測情報が飛び交っている。例えば、トルコは現在のAKP(開発公正党)政権になって以来、イスラム回帰を強め、イスラエルと疎遠になりつつある、というものだ。
そして、アメリカの経済危機の原因を、ユダヤ人の金融ビジネス組織によるものとして、アメリカ社会のなかでは、ユダヤ人やイスラエルに対する反発が、拡大しているという内容のものだ。
したがって、イスラエルはやがてアメリカに捨てられ、地上から姿を消すという説があり、トルコはイスラム諸国を味方につけ、イスラエルを滅ぼすだろう、という意見も流れている。
これらの説には、それなりの根拠が貼り付けられてあり、読者のなかにはもっともだ、と思う人が少なくなかろう。しかし、それほど世の中が、単純ではないことも、もうひとつの真実であろう。
トルコが今年になって、イスラエル批判を強めているのは確かだが、それはイスラエルを陥れようという意図なのか、あるいは、イスラエルに国際社会から尊敬される一員になってほしい、という気持ちからなのかを、知る必要があろう。
トルコのイスラエルに対する批判は、あくまでも後者ではないかと思う。トルコにとって、イスラエルは同盟的立場の国であり、イスラエルが世界の批判にさらされるのは、トルコにとっても不都合なのだ。
しかも、トルコは湾岸諸国をはじめとする、イスラム諸国からの投資を呼び込みたい、とも考えている。そうなると、イスラエルがほどほどに、常識ある行動を、とってくれることを期待しよう。幸いなことに、歯に衣着せずにイスラエルに意見を述べられるのは、いまはトルコ以外にあるまい。
トルコ政府は複雑化しているイスラエルとの関係改善に、敏腕の大使を派遣することを、決定したようだ。彼の活躍により、トルコの意図するところが、イスラエル側に伝えられ、結果的に、イスラエルが現在よりも、国際社会の中で受け入れられる国に、変わるかもしれない。
アメリカとイスラエルとの関係でも、アメリカにとって最も信頼できる中東地域での、軍事協力関係にある国が、イスラエルであろう。東ヨーロッパにミサイル網を、張り巡らすことを断念したアメリカは、イスラエルをその代替え地とすることを、考えているのではないか。
アメリカからは確かに、ユダヤ金融組織に対する批判めいた論文、記事が流されてきてはいるが、だからと言って、アメリカ政府がユダヤ系金融機関を、締め付け潰していくことなどできまい。そうなれば、アメリカそのものが、破壊されることになるからだ。
社会状況が異常な変革期にあるときは、誰もが陰謀説をとりたがるが、陰謀は存在しても、それ以上に社会の変革に影響を与えるのは、常識ではないのか。種々流れ伝わってくる情報の、どれが常識に一番近いかを考えることが、今こそ大事なのではないか。