エジプトのムバーラク大統領が、高齢に達したこともあり、エジプト国内外では、彼の後任大統領に、誰が就任するのかということが、話題にのぼって久しい。
これまで、後任大統領候補として、話題に上っていたのは、ムバーラク大統領の二男ガマール氏だった、ここにきて、ガマール氏に加え、二人の人物の名前が、姿を現し始めている。その二人とは、アラブ連盟事務総長のアムル・ムーサ氏と、IAEAのムハンマド・エルバラダイ事務総長だ。
ムハンマド・エルバラダイ氏はこのことについて、コメントしていないが、アムル・ムーサ氏はエジプトのアッシュルーク紙に対し、コメントしている。アムル・ムーサ氏は。基本的にエジプトを改革していく国民であれば、大統領に立候補することは問題ないとし、彼自身がそうであるように、ガマール氏もまた立候補する、権利があると語っている。
アムル・ムーサ氏は2005年の大統領選挙時も、名前が挙がり一部の人たちが立候補促したが、立候補しなかった。当時、彼はまだ大統領に立候補するのは、時期尚早と判断していたのであろうか。
アムル・ムーサ氏の、エジプトやアラブ諸国民の間での人気は、抜群であり、立候補さえすれば、当選間違いなしと思えるのだが、アラブ世界の政治はそれほど甘くはない。
アムル・ムーサ氏の人気は、彼がアラブ連盟事務総長就任後も、それ以前のエジプト外相時代も、アメリカやイスラエルに対し、率直な批判を口にしてきたためだ。
ムハンマド・エルバラダイ氏は、IAEAの事務総長として、アメリカに十分認知されていることと、国際的に著名であるということから、話題に上っているのであろう。しかし、彼のエジプト国民の間の人気は、アムル・ムーサ氏にとても及ぶまい。
アムル・ムーサ氏は73歳、ムハンマド・エルバラダイ氏は67歳、そしてガマール氏は45歳だ。問題は、大統領候補となるエジプトの法律的条件を、誰が満たしうるかということだ。エジプトの法律では、大統領に立候補するには、与党の幹部を1年以上勤めた者で、国会議員250名以上の推薦が、必要となっている。
このエジプトの法律を、問題なく通過できるのは、現在ではムバーラク大統領の子息、ガマール氏だけではないのか。彼は銀行家として活躍した後、エジプト与党国民民主党の、幹部として要職にあるからだ。
しかし、大統領立候補者の条件の問題で、アムル・ムーサ氏が立候補できないとなれば、エジプト国内では不満が、爆発する可能性もあろう。彼はエジプト国民の間で、それほど人気があるのだ。
今回アムル・ムーサ氏が大統領候補として、話題に上ったのは、彼を陥れるための罠なのか,あるいはエジプト国民の、総意に沿ったものなのか興味深い。