イスラエルがトルコから水の輸入を検討

2009年10月20日

 イスラエルは他の中東諸国同様に、水資源が不足している国だ。同国には、ガリリー湖があり、シリア領土の山岳部から流れ込む水と、地下水が決定的な水量を決めている。

 つまり、シリアの山岳部に降る雪や雨の量が少なければ、それはイスラエルが支配している、ガリリー湖の水位が下がるということを意味しているのだ。このため、イスラエルは海水の淡水化技術で、他の国々に先ん出る、開発をしてきている。

しかし、それだけでは不十分でないことから、イスラエルは2000年代の初めから、外国からの水輸入を検討してきていた。その最優先輸入先国が、トルコだった。トルコには豊富な水資源があり、いまでは幾つものダムが建設されていることから、国内の農業用水だけではなく、輸出に回すだけの水が確保できている。

2000年当初考えられた、トルコからイスラエルへの水輸出は、当時の技術とコストが合わず、結果的に成立しなかった。その頃は大きなゴム風船のような容器に入れて、それを海上輸送する案などが、出ていたと記憶する。

今回イスラエルは、再度トルコからの水輸入を、トルコ政府との間で、交渉し始めたようだが、この裏には、水だけではない他の目的も、潜んでいるようだ。述べるまでもなく、今年5月のシナイ半島のシャルム・エル・シェイクで、ダボス会議が開催されたおり、ガザに対するイスラエル軍の攻撃が、非人道的であったことから、トルコのエルドアン首相はイスラエルのペレス大統領を、非難したという一幕があった。

その後、最近になってNATO軍の合同軍事演習が予定されていたが、トルコがイスラエル軍の参加を拒否したことから、中止になっている。言ってみれば、現在のイスラエルとトルコとの関係は、ぎくしゃくしたものになっている、ということだ。

そこで、今回イスラエルがトルコとの間で、非軍事的な人道的、水の供給問題を話し合うことによって、両国の間に発生していた、わだかまりを消そうということではないか。

コスト的に合わなかった、トルコからの水輸入が、水の輸送技術が飛躍的な発展を遂げ、大幅に採算に合うものとなっている、とは考えにくい。今回の水輸入交渉は、極めて政治的意味合いが、深いのではないか。

いずれにしろ、中東諸国にとって、水資源は石油以上に、重要なのであろう。今後、産油国ならぬ産水国が、中東では金持ち国に代わるかもしれない。先日、それを裏付けるかのような、ニュースが流れていた。イラクのある地方でいくら掘っても水は出ず、石油だけが出て来る、と住民が嘆いているという内容だった。