イラン南東部は、ペルシャ人やアゼルバイジャン人とは異なる、バルーチ族の居住地域だ。このバルーチ族の居住地域は、パキスタンの南西部と重なり、以前から分離独立の動きがある。
そのイラン南東部の各部族リーダーたちと、イランの革命防衛隊幹部が、交渉に入ろうと思った矢先、バルーチ族と思われるテロリストの攻撃を受け、革命防衛隊代表団に、30人を超える死者をだした。
イラン政府はこのテロ事件を、パキスタンの情報部が画策したものだ、と非難し始めている。場合によっては、イランがパキスタンに対し、強硬な手段を講じることもありうる、ということではないか。
パキスタン南西部にあるグワダル港は、中国が大型投資をし、いま巨大な港に変貌しつつある、という情報が伝わってきている。そうであるとすれば、パキスタン政府はバルーチ族を、なんとか巻き込み大込むことによって、パキスタン・バルーチ連合のようなものを、作り上げる必要があろう。
今回のテロの中身は、まだ明らかでないため、パキスタン関与について語ることは、時期尚早であろう。しかし、可能性としては、多分にありうることも、否定できない。ある側を味方につけるときは、双方に共通の敵を作り上げるのが、一番手っ取り早い方法だからだ。
ただ、イランの石油ガスを狙っている中国がおり、中国はイランとの間に問題を起こしたくない、と考えているであろう。その中国は現在、パキスタンにとって最大の、支援国であることを考えると、話は簡単ではあるまい。
このパキスタンの情報部が、今回のテロに絡んでいる、とする説が正しいのであれば、パキスタンの情報部はアメリカとの間で、何らかの協力合意をした上で、テロを行ったのかもしれない。アメリカやイギリスの情報部員が、このバルーチ族の地域で、反イラン工作をしているという情報は、だいぶ前から流れていた。
イランにとっては、欧米諸国やイスラエルと緊張関係にあるだけに、パキスタンとの新たな緊張関係は、イランにとって当座の目線をずらす、手段になるかもしれない。
もしパキスタンの情報部が、関与したテロであるとすれば、きわめて危険な、ゲームであることに違いはない。