トルコの国営テレビTNTで、連続ドラマ(ドキュメンタリーのような形式)が始まった。番組はアイリリク(ファーウエル)というタイトルだ。この番組がいま、とんでもない問題を、トルコとイスラエルとの間に、引き起こしそうだと、大きな問題になりつつある。
このアイリリクは、イスラエルが昨年12月に、パレスチナのガザを攻撃したときの話題を、テーマにしたものであり、極めて生々しい内容になっているようだ。
たとえば、自分の赤ちゃんを頭上に持ち上げて、降伏の意思表示をしている父親に対し、イスラエル兵が停止命令をし、赤ちゃんを銃撃するシーンや、老人男性を膝まづかせて、蹴飛ばすというシーン、パレスチナ人を一列に並ばせて、銃殺するシーンなどがあるということだ。
トルコのイスタンブールに住むユダヤ人女性は、この番組のかに登場するイスラエル兵が、トルコ人ではなく、イスラエル人だと主張している。少なくとも、彼女にはそう見えるのであろう。
イスラエル政府はこのトルコのテレビ番組に対し、非情に神経を使って対応しているようだ。在イスラエのトルコ大使をリーバーマン外相は呼び、説明を求めたようだが、番組の内容を全面否定できないところに、イスラエルの弱みがあろう。
この番組の製作者であるトルコ人、セルジュク・コバノール氏は、番組の内容はあくまでも事実を元にして、製作したものだと主張している。
トルコには現在、26000人のユダヤ人が居住しているといわれているが、彼らはこの番組が原因で、トルコ社会のなかに反セムの動きが起こることを、警戒している。(ドンメと呼ばれるイスラム教に改宗したユダヤ人は、このユダヤ人の数には含まれていない。)
そして、トルコに在住するユダヤ人たちは、イスラエルとパレスチナとの問題は、宗教的理由ではなく、あくまでも土地の問題であり、政治的問題だとしたいようだ。トルコの居住するユダヤ人のほとんどが、セファルデイのユダヤ人であることも、その原因であろう。
番組はあくまでも事実を元にして、製作されているかもしれないが、現時点でこうした内容の番組が、トルコで放映されることは、極めて刺激的ではないのか。トルコはつい先日、NATOの合同軍事演習に、イスラエルが参加することを拒否したばかりでもあるからだ。
トルコのイスラエルに対する、一連の厳しい姿勢が、盟友であるトルコのイスラエルに対する、反省を促す目的であることを願う。誰の目にもイスラエルが、ガザを攻撃したことは、あまりにもひどすぎるものであったからだ。
イスラエルのガザ侵攻で1500人前後のパレスチナ人が殺害され、そのうちの773人は非戦闘員であり、252人が子供、111人が女性だったという報告が出ている。