トルコ・アルメニア関係正常化へ

2009年10月18日

トルコがアルメニアとの関係が正常化しつつある。そのことは欧米に好感されているようだ。しかも、トルコのアルメニアとの関係改善の流れのなかで、アルメニアと敵対関係にあるアゼルバイジャンも、トルコはアルメニアとの関係改善の、役割を果たしていく考えのようだ。

そうは言ってもトルコとアルメニアとの関係改善が、一気に進み両国の国民が、友好的になるかといえばそうではあるまい。100年にも及ぶ、アルメニア人虐殺問題が、今後、両国関係が正常化した後も、長期間にわたってくすぶっていくものと思われる。

しかし、スイスのジュネーブで行われたトルコとアルメニアの関係正常化調印式ではアメリカやヨーロッパ諸国が、アルメニア側に対し圧力をかけてまで、合意に到らせていることから見て、今後経済的な支援をアルメニアに実施していくものと思われる。

そのことは、徐々にではあるが、アルメニアの経済状態を、改善していくことに結びつき、アルメニア国民の間の反発も、和らいでいくことを期待したい。

今回のトルコとアルメニアの関係正常化に対し、アゼルバイジャンは怒りをあらわにしているが、今後、1993年のアルメニアがアゼルバイジャンとの戦争以来、占領したままになっているナゴルノ・カラバフ問題で、トルコとの交渉の中で、アゼルバイジャン側に返還していくのではないかと思われる。

既に、ナゴルノ・カラバフの7地区のうち、5地区をアゼルバイジャン側に返還する合意が、出来ているという情報が流れていることからも、この問題の解決については、楽観できるのではないか。

トルコとアルメニアとの合意が、スイスのチューリッヒ市で交わされた。その舞台裏では アルメニアのナルバンデアン外相が不満を述べ、合意に至らないのではないか、という不安が沸いたようだ。

しかし、アメリカ・ロシアのアルメニアに対する働きかけが効奏し、結果的には、トルコとアルメニアの国交正常化が、合意されたわけだ。アルメニアのナルバンデアン外相は、調印式でアメリカ・ロシアの圧力によって、合意に至らしめられたことから、不満の表情を隠さなかったと伝えられ、トルコの代表であったダウトール外相は、合意文の一部を読むことを控えたとも伝えられている。

しかし、その二日後、トルコのブルサ市で行われたワールド・カップ予選のサッカー試合に、アルメニアのサルキシアン大統領が、観戦のためトルコを訪問している。サルキシアン大統領がこのサッカー試合観戦のなかで、どのような表情を見せるのかが、注目されていたが、彼はいたって明るく、サッカー試合を観戦していた。そればかりか、ブルサのサッカー応援の様子に興味を持ち、楽しかったと賞賛してさえいる。

つまり、アルメニアのサルキシアン大統領は、自国民と外国に居住するアルメニア人に対するゼスチュアとして、トルコとの関係正常化合意で、不満の表情を見せたのであり、決して合意そのものに、不満だったのではなかったものと思われる。これといった資源も産業も持たないアルメニアにとっては、優秀な人材が自由に国内外を移動できることが、唯一の国家の資産、財産であろう。

今回のトルコとアルメニアの合意は、アルメニアに対し外国、海外へのアクセスを与えるという、性格のものであったと思われる。その関係正常化合意の目的の、根底にあったのはアルメニアの経済活性化であり、トルコにとっては新たな投資先、輸出先の確保であったということだ。