湾岸二国の異なるイラン対応は、どちらも不安が原因か

2009年10月16日

 湾岸諸国はイスラエルのイラン攻撃、あるいはアメリカによるイラン攻撃の可能性が消えないばかりか、次第に真実味を帯びてくるなかで、きわめて難しい外交の選択を迫られているようだ。

 アメリカはイランに対し、厳しい経済制裁を実施することにより、イランから核兵器開発で、妥協を引き出そうとしているが、イランの国内状況を考えると、イラン側が妥協するのは、極めて困難であろう。

 そうなると、アメリカに残される手段は、軍事攻撃しかなくなる、ということだ。そしていま、アメリカ政府は史上最大のバンカー・バスター爆弾を、大量発注し、核兵器攻撃に代える準備を進めている。

 他方、イスラエルは12月を忍耐の限度として、イランに対する軍事攻撃を実施する、と宣言している。その二つの国が最終的に、イラン攻撃に踏み切るのか否かについては、まだ判断を下さないほうがいいだろう。ということは、軍事攻撃はありえないという判断を、現段階ではすべきで無い、ということでもある。

 もし、イランに対する軍事攻撃が、イスラエルあるいはアメリカ、あるいはその二カ国によって実施されることになれば、湾岸諸国、なかでもアメリカ軍の基地を抱えている国、あるいは軍事協力関係にある国(クウエイト、バハレーン、サウジアラビア、カタール、オマーン)は、イランの攻撃のターゲットとなることは、間違いなかろう。

 そこで、湾岸の小国は自国の立ち居地を、何処に定めるかに苦心している。アメリカ軍の巨大な基地を有するカタールは、イランとの関係強化を進めている。そのことによって、イランの攻撃から免れよう、としているのであろう。

 もうひとつの湾岸の国、アラブ首長国連邦のなかのアブダビ首長国は、イスラエルとの正常な関係に、向けて動き出している。それは、アメリカが湾岸諸国に対して、大分前から要求していることだからだ。

 つまり、アブダビはアメリカの意向を受け入れ、イスラエルとの関係正常化に動き出すことによって、万が一の場合、アメリカにイランの攻撃から、守ってもらおうという考えなのであろう。

 ここで、アブダビとフランスとの間で、アブダビにフランス海軍の海軍基地設設置合意が、成立しているということを、思い起こす必要があろう。つまり、今回のアブダビのイスラエルとの関係促進は、フランスの助言によるものでもあった、可能性もあるということだ。そこには、フランスのサルコジ大統領は、ユダヤ系の人だといわれていることも、関連しているかもしれない。

 結果的に、アブダビは同国首都で開催された、国際エネルギー会議に、イスラエルの代表の参加を認め、イスラエルの国旗を会場に立てたのだ。これは湾岸諸国のなかでは、初めてのことであろう。カタールも以前から、イスラエルとの関係正常化に向けた動きをしてきたが、イスラエルの国旗を正式に、国際会議の場に並べさせることは、認めてこなかったように記憶する。

 カタールにしろ、アブダビにしろ、相当熟慮した結果の決断であろうが、今後のイランとアメリカ・イスラエルとの緊張のなかで、それがどのような結果を生み出してくるのか、興味のあるところだ。アブダビはイランとの間で、大小トンブ島アブムーサ島の領有権をめぐり、問題が存在しているだけに、カタールのようなわけには行かないのであろうか。