来年、イラクでは選挙が行われる。その結果によって、誰が次期首相に就任するかが決まる。アメリカ軍の撤退問題もあり、次期首相に誰が就任するのかは、今後のイラクの主要政治テーマになって行くだろう
以前にも触れたが、イラク国内ではダウア党出身のマリキー氏が、首相の座にあるが、次期首相の座をめぐり、相当動きが活発化してきているようだ。これまで首相を経験した、ジャアファリ氏やアラーウイ氏も、当然のことながら返り咲きを目論んでいよう。
イラクの場合、宗教派閥がどう動くかが、選挙の結果を予測する上で、非常に大きな手がかりになるが、イスラム教シーア派学者として最高位の、アヤトラオズマになって帰国した、イラクのシーア派のリーダーの一人であるサドル師は、次期首相にマリキー氏が就任することは、あり得ないと明言した。
このサドル師の言葉には、大きな意味があろう。彼の率いるマハデイ軍が矛を収めたために、マリキー政権は一応イラクの統治が、出来てきていたからだ。しかし、もしサドル師率いるマハデイ軍が、以前のようなテロ活動、軍事行動を再開すれば、イラク国内の治安状況は、一遍に悪化しよう。
サドル師らが結成した政党集団に、マリキー首相のダウア党が参加したとしても、彼が首相の座に就くことは確かではない。彼以外にも、多数の首相候補者がいるからだ。
サドル師のグループが次期選挙で、多数立候補することになれば、これもまた問題であろう。大半のシーア派の国会議員が、彼のグループのメンバーによって占められる、可能性が少なくないからだ。
アラーウイ氏はこうした流れを冷静に分析してか、いまのところ、あまり目立った行動には出ていないが、早晩、彼は次期首相レースの前面に出てこよう。アラーウイ氏とサドル師との連携が出来上がれば、マリキー首相も相当追い込まれるのではないか。
サドル師がアヤトラオズマになれたのは、イラン側のイラク内政に深く関与していく意図から、事前に打ち込まれた楔であったろう。加えて、アラーウイ氏は首相の座を降りた後、イランとの関係を構築していた。
この二人がイランの支援を受けながら、イラク国内の政治の表舞台に出てくれば、アメリカはイランと戦うことなくして、イラク戦争の成果を奪われることになる、ということではないのか。