アルカーイダがイラク刑務所から集団脱走

2009年9月25日

 イラクのサラフッデーン県にある、テクリート市の刑務所から、アルカーイダのメンバーが、集団脱走に成功した。16人の脱走者のうちの一人には、死刑判決が下っていた。

 このうちの一人は、脱走後逮捕されたが、それ以外の脱走者は、未だに捕まっていない。このため、アブドルカリーム・ハラフ中将はサラフッデーン県全域と、国境地帯にチェック・ポイントを設け、脱走者の再逮捕の構えを敷いた。

 問題はこの大がかりな脱走が、なぜ成功したのかということだ。死刑囚もいたことから、この刑務所は厳重な警備が、敷かれていたはずなのに、なぜ逃亡出来たのか。脱走者たちは風呂場の窓を外して、そこからビル外に出、次いで、梯子を使って刑務所の塀を、乗り越えて逃げたということだ。

 どう考えても、これは刑務所内に協力者がおり、彼らの手引きで逃亡が、可能となったものだと思われる。そう考えているのは私だけではない、テクリート地区の治安責任者も、同じ意見のようだ。

 テクリート地区と言えば、追い浮かぶのは、サッダーム・フセイン元大統領の出身地であり、スンニー派の地域だ。アルカーイダのメンバーは、スンニー派出身者であること、サッダーム・フセイン元大統領の支持者が、この地区には少なくないことなどを考えると、刑務所内部関係者による手引きは、十分にありうることだ。

 問題はこの後、アルカーイダ・グループがどのような破壊活動を、イラク国内で展開していくかということだ。今後、アルカーイダがターゲットとするのは、イラク駐留のアメリカ軍が一つであり、シーア派イラク国民、クルド・イラク国民ということになろう。 

来年の段階では、イラクの選挙が予定されており、国内の各派はテロを始めとする、あらゆる手段を使って、自派の優位を確保しようと考え、工作するであろう。

 今回の集団脱走のニュースを読んで強く感じたことは、アルカーイダとイラクのスンニー派、あるいはサッダーム・フセイン元大統領の支持者たちとの連携が、始まったのかということだ。もしそうであるとすれば、現在、シリアとイラクとの間に燃え上っている、相互不信の感情は、ますます拡大していくものと思われる。

 現在、シリアとイラクとの間では、シリアがイラク人の反政府派(主にサッダーム・フセイン元大統領支持派)をかくまっており、イラクへの越境テロ攻撃を支援している、とイラク側が主張し、両国間で大きな問題となっている。

もし、脱走したアルカーイダのメンバーが、イラク・シリア国境で逮捕されることになれば、シリアとイラクとの関係は、ますます複雑化していくのではないか。イラクのマリキー首相は、イラクとシリアとの間で、問題になっているテロ支援の件は、全く解決の目途が立っていないと語っている。