エジプトの大衆政治運動として、一時期は大きな盛り上がりを見せていたキファーヤ運動は、その後、代表者カンデール氏が逮捕され、投獄された。その後、彼が釈放される時の条件は、政治活動を再開しないということだった。
したがって、彼はその後、政治活動面で慎重な動きを見せてきたが、ここにきて、再度活動を活発化させる方向に、動き出したようだ。カンデール氏が率いるキファーヤ運動(党)は、ムバーラク大統領の後継者と目されている、ガマール氏を、その新たな闘争の、ターゲットと定めたようだ。
キファーヤ党の主張によれば、ガマール氏が蓄財している額は、七億五千万ドルにも上り、その出所が怪しいということのようだ。キファーヤ党はガマール氏がこの財産を、どうして手に入れたのか、追及すべきだと主張している。
キファーヤ党の手元には、ガマール氏の不正蓄財に関する、各種の情報と証拠書類が、揃っているとも主張している。
そもそも、キファーヤ党はガマール氏が、大統領候補に就任すること自体、法的に問題があるともしている。
今回のキファーヤ党の、ガマール氏攻撃宣言ともいえる表明は、ドイツの通信社とカンデール氏との、インタビューの形で表面化したものだ。
ムバーラク大統領の高齢化が話題に上り、それと相前後して、後継者が話題になり、ムバーラク大統領の二男ガマール氏の名前が、最有力候補者として登場してきていた。
この時期に、キファーヤ党があえて危険を冒して、ガマール氏の大統領後継就任阻止に、挑戦するということは、いくつかの理由があろう。
ムバーラク大統領の健康状態が、相当悪化してきており、権力内部でガマール氏後継の準備が、相当進められていることによるのではないか。そして、ガマール氏の大統領後継就任については、政府高官屋インテリ層も含む、多くのエジプト国民が、反対しているからではないか。
今回の動きは、ガマール氏の後継者への道を、法的に阻止しようということであり、金に絡んだスキャンダルも、露見する可能性のあるガマール氏にとっては、きわめて危険な動きだ。
そのことは、追及する側のキファーヤ党にとっても、相当な危険が伴うということであろう。エジプト国民はキファーヤ党を、どこまで支持するのか。警察はどう動くのか、裁判所はどのような行動を起こし、判断を下すのか。
エジプトはいま、非常に緊張した状況を、迎えつつあるのかもしれない。