イスラエルのエルアル(ELAL)航空が、欧州便やアジア便を飛ばす場合、サウジアラビア、シリア、レバノン、イラク、レバノン、アフガニスタンなどが、自国の領空の通過を認めないために、遠回りをせざるを得ない状況にある。
こればかりではなく、北アフリカ諸国の領空通過も、認められていないことから、エルアル機は燃料を相当に余計に、消費しているということだ。経済観念の強いイスラエル人にとっては、これは大きな問題のひとつであろう。
そうしたなか、アメリカで行われる中東三者会議(アメリカのオバマ大統領、イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバース議長)では、ヨルダン川西岸地区への、イスラエルによる入植が、主要なテーマとなる。アメリカのオバマ大統領にしてみれば、問題を少しでも前進させたい、ということであろう。
そこで出てきた情報が、イスラエルのヨルダン川西岸地区への、入植を停止することと、アラブ諸国の領空通過を、交換で認めるという話だ。この情報はワシントン・タイムズ紙が報じたものだが、何処まで信憑性がある話かは、なんとも言えない。
サウジアラビアは、中東問題が完全に解決するまでは、エルアル機の領空通過を認めない、と明言しているが、当然といえば当然であろう。アラブ諸国の多くは、いまだに橋や公共建物の写真撮影を、厳しく禁止しているのだ。
エルアル機が自国の領空を通過するということは、航空写真を撮られてもいい、ということに他ならない。それは、戦略的には非情に大きな、マイナスであろう。もちろん、偵察衛星から撮れば、全く問題は無いから、航空機から撮らせても、大勢に影響は無いと言えばそれまでの話だが、アラブ諸国側には、感情的な部分もあろう。
このヨルダン川西岸地区への、イスラエルの入植停止と交換に、領空通過を認めるという話は、どうも実際にそれが、アラブ諸国から提案されたというよりは、そのようなこともありうる、というアメリカの上げた、観測気球ではないかと思えてならない。
あるいは、パレスチナ自治政府がイスラエルに対し、ヨルダン川西岸地区への入植活動を停止するならば、エルアル機のアラブ領空通過を、アラブ諸国と掛け合ってもいいと、言ってみたという程度の話ではないのか。
もし、この情報が事実であるとすれば、アラブ側の革命的なイスラエル対応の、大変革ということになろう。そうした大変革をする必要が、いまのアラブ諸国には無いのではないかと思えるのだが。