ナスルッラー師がイエメン内紛停戦呼びかけ

2009年9月20日

  レバノンのヘズブラのリーダーである、ハサン・ナスルッラー師がイエメン内紛の、停戦を呼びかけた。これに対し、イエメン政府は歓迎の意を表したが、それは表面的なものだ。

 述べるまでも無く、レバノンのヘズブラは、イスラム教シーア派の組織であり、イエメン政府軍がいま戦っているアルホウシ部族は、シーア派の一派である、ザイデイ派だからだ。

 つまり、レバノンのヘズブラが、イエメン内紛の停戦を呼びかけたのは、あくまでも、イエメンのシーア派を守りたい、という意向からであり、公平な問題の解決を、望んでではないのだ。

 これまで、イエメン政府はイエメンのシーア派勢力に対し、イランが物心両面の支援を送っている、と非難してきている。イランがイエメンのシーア派を支援するのは、当然といえば当然であろう。イランはイスラム教シーア派の、総元締めだからだ。

 イエメンのイラン非難に対し、イラン政府はイエメンがサウジアラビアから、物心両面の支援を受けて戦っている、と非難している。そして、サウジアラビアがイラクでも、イエメンでも、シーア派に対する攻撃を支援している、と非難しているのだ。つまり、中東における不安定な状態は、サウジアラビアがテロリストを、支援しているから生じているのだ、と非難しているのだ。

イランは最近、サウジアラビアがテロリストを支援していることを、アメリカも知っていると非難している。つまり、サウジアラビアのシーア派に対する攻撃支援はアメリカもその裏にいる、と言いたいのであろう。

この場合、問題はイランではなく、レバノンのヘズブラが、イエメンの内紛に口を挟み始めたということ。ヘズブラの義勇兵が、イエメンに入り込むことは、イランの義勇兵が入り込むよりも、容易であろう。その可能性が、出てきたということだ。

イエメンは黄海の出口、バーブ・ル・マンデブ海峡を、支配する要衝であり、ここをイランが支配下に置くようになれば、中東情勢は極めて複雑かつ、不安定になろう。述べるまでも無く、ペルシャ湾の出口であるホルムズ海峡は、イランの支配下にある、と言っても過言ではない。つまり、アラビア半島を囲む二つの海峡が、イランの手に落ちる可能性が、出てきたということだ。

イエメンのアルホウシ部族が、イエメン軍に勝利するとは思えないが、もし、アルホウシ部族の抵抗が長期化すれば、イエメン政府は弱体化する危険が生じ、その折には、かつてのようにイエメンが、南北に分裂することもあろう。