最近のトルコの中東地域や、中央アジア地域に対する外交には、目を見張るものがある。
過去数年には、トルコがイランとEUとの関係の仲介を務め、続いて、シリアとイスラエルとの間接交渉の扉も開いた。それらの動きは、当時意外なこととして受け止められたが、それなりの成果を出している。
続いて、トルコが進めていたのはイラクとの関係だが、これもクルド自治政府イラク中央政府との関係を強化し、現在ではイラク中央政府もクルド自治政府も、トルコの役割に大きな期待を、寄せるようになった。
そして、トルコ外交の極め付きは、アルメニアとの関係改善であろう。1915年ごろに起こった、トルコ軍によるアルメニア人大量虐殺という問題があり、両国関係は劣悪な状態を、100年近くも続けてきていた。
しかし、最近になってトルコ・アルメニア関係は改善し、一定の成果を上げつつある。最初の関係修復のきっかけは、アルメニアで開催されたサッカーの試合に、トルコのギュル大統領をアルメニア側が招待する、という形で始まった。
もちろん、それ以前に双方の外交レベルでの、活発な努力があってのことだ。結果的には、あくまでもサッカーという名目ではあったが、ある種の雪解けムードがトルコ・アルメニア関係に生まれ、最近では両国の国境が、近く開かれるという話が出てきている。来年初までには、両国関係は大分しっかりしたものになって行くことが、期待されている。
このトルコとアルメニアの関係改善の動きを見て、気がかりだったのは、アゼルバイジャンの反応だった。アゼルバイジャンからしてみれば、兄弟国であるトルコが、突然敵対国であるアルメニアとの関係を、改善する動きに出たことは、裏切り行為のように、受け止められかねないからだ。
しかし、トルコ・アルメニア関係改善のニュースの後に出てきたのは、アルメニアがアゼルバイジャンに対して、5つの地区を返還するという話だった。つまり、トルコはアルメニアとの関係改善の動きのなかで、十分にアゼルバイジャンを考慮に入れていた、ということであろう。
結果として、アゼルバイジャンもアルメニアとの国境を、開放する方向に向かい始めている。そうなれば、早晩、アゼルバイジャンとアルメニアとの間に横たわる、ナゴルノ・カラバフ問題も解決に向かうだろう。
結果がそうなれば、アゼルバイジャンを玄関口とし、アルメニアを経由し、中央アジアのエネルギー資源が、トルコに届けられることになるのではないか。そうなれば、3国にはお互いに、メリットがあるということであろう。ぜひそうあってほしいものだ。